日本郵政グループの経営は至難の業 旧国鉄ならい地域分割してはどうか

 【高論卓説】

 日本郵政グループが揺れている。かんぽ生命保険では新旧契約の重複加入による保険金の二重徴収や顧客を一時的に無保険の状態に置くなど、これまでに9万件を超す契約で顧客に不利益を与えた可能性が発覚。7月14日には、日本郵便とかんぽ生命のトップがそろって記者会見し謝罪、当面の間は積極的な営業を自粛すると発表した。

 かんぽ生命は2900万件に上る全ての契約者に手紙を出し、契約内容が意向に沿っているか確認する。その上で意向に沿っていない契約については、契約の取り消しや保険金の返還に応じるという。両社は早期に第三者委員会を設置し、社内の調査結果を年内に経過報告するとしている。

 また、ゆうちょ銀行でも勧誘時に健康確認を怠るなど、不適切な手続きで高齢者などに投資信託を販売していたことが明らかになった。不適正な販売は約230ある直営店のうち実に約9割の店で行われており、社内ルールに抵触したケースは1万5000件以上に及んでいる。

 一連の不適切な販売の背景には過剰なノルマと営業を奨励する手当があることは明らかで、日本郵便の横山邦男社長は、超低金利など販売環境が変化しているにもかかわらず「営業推進体制が旧態依然のままだった」と謝罪した。

 日本郵政グループではこれらノルマや手当を廃止する意向である。しかし、より根本的な問題は、なぜそうした過剰なノルマと手当が長く温存されてきたかという点であろう。そこには、郵政省から日本郵政公社そして日本郵政へと政治に翻弄され、強引かつ方針が二転三転するいびつな民営化が推し進められた歴史的な経緯がある。

 そもそも郵政事業、なかんずく郵貯、簡保の金融部門は国の財政投融資と一体のものであった。もっぱら資金吸収が使命で、集められた巨額な資金は財政投融資制度を通じて、国の第2の予算に充てられてきた。この仕組みは国の金融がまだ十分に成熟していない段階ではうまく機能したが、金融の高度化・グローバル化が急速に進む中、郵貯、簡保と財政投融資は切り離され、民営化に大きくかじを切った。

 しかし、郵便局は民営化が進められながら、国の資本が残るため業務範囲は制限され、全国規模でのユニバーサル(均一)サービスが義務付けられている。その一方で貯金限度額は相次いで引き上げられてきた。限度額は今年4月に倍の2600万円に拡大されたばかりだ。まさに日本郵政は手足を縛られたまま肥大化するジレンマを抱えて疾走している。

 また、日本郵政、日本郵便、ゆうちょ銀、かんぽ生命の各トップは、政権が変わるごとに猫の目のように交代した。現在は民間金融機関の出身者が各トップに就いているが、経営のステークホルダー(利害関係者)は多岐にわたる。経営は連立方程式を解くような至難の業と言っていい。その意味では同情を禁じ得ない。

 コーポレートガバナンス(企業統治)改善の最大の処方箋は、皮肉ながらできるだけ早く国が日本郵政グループの株式を放出し、完全民営化を実現することかもしれない。だが、やはり日本郵政グループは巨大すぎる。ゆうちょ銀をとってみてもメガバンクを超す規模を誇る、いわばギガバンクである。今回の不祥事を契機に今一度立ち止まり、旧国鉄のように地域分割して、各地域の核となる地域金融機関として再出発してはどうだろうか。

 ■森岡英樹(もりおか・ひでき) ジャーナリスト。早大卒。経済紙記者、米国のコンサルタント会社アドバイザー、埼玉県芸術文化振興財団常務理事を経て平成16年に独立。福岡県出身。

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