ジェット旅客機再延期の三菱重工 経験不足が壁に

 三菱重工業がジェット旅客機「スペースジェット(旧MRJ)」の納入延期を決めた。6度目となる今回も、経験やノウハウの不足が高い壁となって眼前に立ちふさがった格好だ。平成20年の事業化から10年以上たっても一向に完成せず、顧客の信頼も薄れる中、今後の受注活動への影響が危惧される。

 「時間がかかるのは避けられない」

 三菱重工が6日に東京都内で開いた記者会見。泉沢清次社長は険しい表情で投資回収が遅れるとの見通しを示した。ここ3年はプロジェクトを経営トップの直轄とし、開発への関与を深めていただけに、関係者の落胆は大きい。

 29年1月に行った5度目の延期は、安全性を高めるために電子機器の配置を分散し、配線のレイアウトも変える必要が生じたのが理由だった。これに対し今回は、変更を施した試験10号機の完成が遅れたのが主な原因だ。延期理由は毎回異なるが、背景に経験不足がある点は同じだ。

 三菱重工は、米ボーイングの旅客機「787」向けに主翼を製造している。だが民間航空機は小型ビジネスジェットを手掛けたことがある程度。それより大きい旅客機となると、昭和40年に運航開始された「YS-11」の国策プロジェクトに参画して以来だ。多様な技術を組み合わせる総合力などの不足は否めない。

 経験が不足していると、トラブルへの対処にも時間がかかってしまう。試験10号機の製造時にも重要部品の不具合に直面、完成が遅れる一因となった。

 同社もここ数年は、「国産」へのこだわりをかなぐり捨てて、経験豊富な外国人技術者を高給で雇用。開発を担う三菱航空機の外国人技術者は、平成20年の設立時にゼロだったが現在、約500人を数える。開発責任者には、初の外国人となるボンバルディア(カナダ)出身のアレックス・ベラミー氏を据えた。型式証明(TC)取得に至っていないとはいえ、三菱重工のある社員は「日本人だけだったらここまですらたどり着けなかった」と吐露する。

 地方都市間を結ぶリージョナル機の需要は年々拡大しており、100席級以下は今後20年で5千機以上に達すると予測されている。しかも、最大市場の北米中心に普及している70席級以下は古い機種しかなく、開発する競合もいない。90席級の「M90」に続いて開発を進める70席級の「M100」は依然、三菱重工が需要を総取りできる可能性がある。

 もっとも、その北米ではこれから老朽機の大量更新が始まる見通し。投入が遅れれば、顧客はより小型のプロペラ機などを選ばざるを得ない。泉沢社長が認めるように、8千億円規模に膨らんでいるとされる開発費の回収も遅れ、ますます窮地に追い込まれることになる。(井田通人)

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