日本製鉄の高炉休止、背景に厳しい環境 国内は守勢強める

 日本製鉄が、日鉄日新製鋼呉製鉄所(広島県呉市)の閉鎖を柱とする大規模な合理化策を発表した。決断の背景には、需要減や原料価格の高騰といった、鉄鋼業界を取り巻く厳しい環境がある。日鉄は、余剰設備を一気に削減することで筋肉質な体質への転換を急ぐ構えだが、今後も厳しい環境が続くと予想される中、今回のみに終わらない可能性もある。

 「過去に例を見ない(厳しい)状況に直面している」。日鉄の右田彰雄副社長は7日に東京都内で開いた記者会見で、改革に踏み切る理由をそう説明した。

 米中貿易摩擦の長期化などで、鉄鋼製品の需要は世界的に低迷。世界生産の約半分を占める中国勢が、景気刺激策を背景に生産を拡大し、鉄鉱石などの原料価格は高止まりしている。もともと中国の過剰生産で慢性的な供給過剰に陥っていただけに、閉塞感はさらに強まっている。

 国内も厳しい。昨年の粗鋼生産量は前年比4・8%減の9928万4000トンと10年ぶりに1億トンを割り込んだ。今年も同程度にとどまる見通し。老朽化などによる設備トラブルも頻発している。

 鉄鋼各社は、自動車大手などの顧客に値上げを要請してきたが、収益悪化を補うにはほど遠い状況だ。

 日鉄は、平成24年10月に旧新日本製鉄と旧住友金属工業が経営統合して誕生、昨年4月に社名を新日鉄住金から改めた。29年3月には日新製鋼(現日鉄日新製鋼)を子会社化している。相次ぐM&A(企業の合併・買収)で企業規模が拡大した半面、収益力は低下。昨年11月には、国内に16カ所ある製鉄所や製造所を6つの組織に再編する方針を打ち出し、リストラの観測が強まっていた。

 呉製鉄所は昭和26年、「戦艦大和」を建造したことで知られる呉海軍工廠の跡地に建設された。日鉄日新製鋼で唯一の高炉を備えた拠点だが、老朽化が目立ち、規模も比較的小さい。和歌山製鉄所(和歌山市)は旧住金系の拠点で、休止する第1高炉は平成21年稼働と新しいものの、競争力向上が課題となっていた。

 日鉄は昨年12月、欧州アルセロール・ミタルとインド大手エッサール・スチールを買収。買収額は日鉄の負担分だけで3000億円超に達した。「国内市場は人口減などで縮小していく」(右田氏)とみられる中、同業のJFEホールディングスや神戸製鋼所を含め、新興国では攻め、国内では守りの姿勢を強めることになりそうだ。

(井田通人)

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