「真知子」と「春樹」は出てこない“ポスト宮崎駿”の『君の名は。』

 【エンタなう】映画「君の名は。」(公開中)が大ヒット中だ。といっても、真知子と春樹は出てこない。銭湯を空っぽにした昭和の名作ではなく、ポスト宮崎駿のひとりと目される43歳の異才、新海誠監督・脚本・原作による長編アニメである。

 1000年ぶりという彗星の接近が1カ月後に迫ったある日、山あいの田舎町に暮らす女子高生の宮水三葉(声・上白石萌音)は、憧れの東京で男子高校生になった夢を見る。一方、東京の都心で暮らす男子高校生の立花瀧(神木隆之介)も、いつものマンションのベッドではなく見知らぬ日本家屋の畳の間で目覚める。気付くと女の子になっていて、「おわっ!」と驚くと同時に、オッパイを揉みしだく…。

 男女の心と体が入れ替わるのは、大林宣彦監督の「転校生」のオマージュにも思えるが、田舎と都会、女と男、それ以外に重大なズレが生じて、2人は奇想天外な事態に巻き込まれていく。ストーリー展開が秀逸だ。

 登場人物の気持ちを織り込んだRADWIMPS(ラッドウィンプス)の挿入歌が、単なる劇伴ではなく、ミュージックビデオのように同期して切ない感覚が増幅する。

 評判の「シン・ゴジラ」では、庵野秀明監督が「今そこにある不安」と日本人の向き合い方を提示した。新海監督も壮大で流麗なアニメを駆使して同工異“夢”を描いてみせた。

 東京大空襲に翻弄された真知子と春樹のように、このアニメの2人にもカタストロフィが立ちふさがる。これは菊田一夫へのリスペクトか。なかなかの手腕だ。 (中本裕己)

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