心臓移植通じて命のつながり描く 「あさがくるまえに」のカテル・キレヴェレ監督

 【映画深層】

 命をつなぐというテーマは、今回の作品だけではなく、これからもずっと続いていくだろうという。9月16日公開の「あさがくるまえに」は、注目のフランスの新鋭、カテル・キレヴェレ監督(37)が、心臓移植をモチーフに多彩な映像表現をちりばめて描いた意欲作だ。身重の体で来日した監督は「映画も自分のエネルギーをつぎ込んで新しいものを生み出していくという作業であり、これからも映画の命を次につないでいくことはずっと継続していくと思う」と話す。

■死は新たな生につながる

 映画には主人公といえるような人物は登場しない。あえて言えば、主人公は心臓になるだろうか。

 ガールフレンドのジュリエットが眠っているベッドを抜け出し、友人とサーフィンに出かけたシモンは、その帰り道に交通事故に遭い、脳死の判定を受ける。病院に駆けつけた母親のマリアンヌ(エマニュエル・セニエ)は、動揺を隠せない中、移植コーディネーターのトマ(タハール・ラヒム)から臓器の提供を求められる。一方、50代の音楽家、クレール(アンヌ・ドルヴァル)は、重い心臓病のせいで、もう長くはないことを悟っていた。

 フランスの女性作家、メイリス・ド・ケランガルのベストセラー小説が原作だが、小説ではどちらかと言うと喪失や死にウエートが置かれているのに対し、キレヴェレ監督は心臓を与える側だけでなく、受け取る側の人間模様にも焦点を当て、命がつながるという部分を手厚く描いた。

 「死というものは最後に行き着く場所だと思われがちだが、私は死を中間に位置づけている。死は終わりではなく、新たな生を呼ぶことにつながるのではないか。そんな視点でこの映画を作った。フランスの一般的な考え方では、死は人生の終わりであり、そこで終止符が打たれるというものなので、東洋的な思想に近いかもしれません」とキレヴェレ監督は説明する。

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