池井戸小説初の映画化「空飛ぶタイヤ」 “職人監督”ならではのセンス満載

 撮影所育ちの矜持(きょうじ)として、どんな企画でも映画に仕上げる技術と精神は身についているという自負がある。6月15日公開の「空飛ぶタイヤ」を手がけた本木克英(もとき・かつひで)監督(54)は、松竹の社員助監督出身という、かつての映画黄金期を支えた「撮影所システム」で研鑽(けんさん)を積んだ最後の世代だ。昨年に松竹を退社して初めて臨んだ映画が、このベストセラー小説を基にした骨太な社会派作品だが、「制約もそんなになかったし、とても楽しい撮影だった」と振り返る。

■没個性のエリート会社員

 原作は、平成18年に刊行された池井戸潤(いけいど・じゅん)(54)の長編小説。「半沢直樹」「下町ロケット」など何度もテレビドラマ化されている池井戸作品だが、意外なことに映画化はこれが初めてとなる。

 赤松徳郎(長瀬智也)が社長を務める赤松運送のトレーラーが、走行中にタイヤが外れる事故を起こし、歩道を歩いていた主婦を直撃して死なせてしまう。警察から整備不良を疑われる中、赤松はトレーラーを製造販売するホープ自動車に事故原因の再調査を依頼。一方、赤松の度重なる要求を煩わしく思っていたホープ自動車販売部の沢田(ディーン・フジオカ)は、社内に重大な秘密があることに気づく。

 さらに融資元のホープ銀行や警察、マスコミ、被害者の遺族などが絡み合い、70人もの群像劇で巨大企業に挑む弱小運送会社の闘いを描く。特に赤松運送の社員が一人一人、個性が際立っているのに対し、ホープ自動車は役員以下、みな同じような印象で誰が誰だかわからない。この対照の妙について、本木監督は「明言してはいなかったが、そう感じていただけたらうれしいですね」と言う。

 「満員電車で見るようなスーツ姿の会社員は、だいたい没個性に見える。組織を守ろうとして生きている人たちで、なるべく自分のことは気づかないでくれというエリート会社員にしようと思いました」

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