31歳女性監督、つらい経験昇華させ初長編 「悲しみに、こんにちは」で映像の力を実感

 【映画深層】

 長編第1作に選んだテーマは、子供のころに関わるつらい記憶だった。7月21日公開のスペイン映画「悲しみに、こんにちは」は、母親を亡くした少女が新しい家族の中で成長する姿を描いた作品で、カルラ・シモン監督(31)が昨年のベルリン国際映画祭で新人監督賞を獲得するなど、世界中で評判を呼んでいる。公開を前に初来日したシモン監督は「決して暗い映画ではない。むしろ明るいくらいです」とアピールする。

思い出せないつらさ

 舞台は1993年のスペイン・カタルーニャ州。母親を亡くして1人になったフリダ(ライア・アルティガス)は、州都バルセロナから70キロほど北東にあるガローチャに住む叔父一家に引き取られる。叔父も叔母も、幼いいとこのアナ(パウラ・ロブレス)もフリダを温かく迎え入れるが、都会育ちでわがまま放題のフリダは、母を恋しがってふてくされる。ある日、アナと一緒に森に分け入ったフリダは、取り返しのつかないことをしてしまう。

 映画で驚くのは、フリダ役のアルティガスもアナ役のロブレスも、演技とは思えないほど自然な振る舞いと表情を見せていることだ。

 「キャスティングの段階からできるだけ脚本のイメージ通りの子供を探した。決まってからもなるべく長い時間、一緒に過ごすようにして、彼女たちが映画の環境に慣れるように努めた」と打ち明ける。

 だから撮影が始まったときには、絶対にうまくいくという自信があった。

 それに、シモン監督も母親を亡くしていた。6歳のときで、映画でフリダがバルセロナからガローチャに移り住むのは、そもそも自身の経験だ。

 「幼かったので、すべてを覚えているわけではないし、思い出すのは楽しいことの方が多いですね」。今回、脚本作りのため、母親が生前住んでいた場所に行ったり母親のことを知っている人たちと話したりした結果、自分が「どんなに母のことを忘れているかを思い知らされた」。それがつらかった。

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