村上春樹原作を映画化 「ハナレイ・ベイ」松永大司監督

 作家、村上春樹の同名短編を映画化した「ハナレイ・ベイ」は、不慮の事故で19歳の息子を失った母親の喪失感と再生への道のりを描く人間ドラマ。ただ、松永大司(だいし)監督(44)の味付けは、ときに軽快な音楽に乗せた、クールで明るい仕上がりとなった。(高橋天地)

 「僕は村上作品の熱心な読者ではない。もし大ファンだったら、きっと手も足も出なかったはず」。脚本も手がけた松永監督は、何の束縛も感じずに撮影できた充実感を口にした。

 原作では、ある程度満ち足りた人生を送る主人公のサチ(吉田羊)が、実の息子であるタカシ(佐野玲於)を人間的に好きになれず、ギクシャクした関係が続く様子を淡々とつづっている。

 松永監督のテイストはどこか冷めた感のある原作とは明確に一線を画す。「映画化するならば、原作とは違う新しい価値が生まれなければだめ。そう考えたとき、ふと音が重要ではないかと考え、音楽ありきで脚本を執筆した」

 実際、冒頭から米ロックスター、イギー・ポップの代表曲「ザ・パッセンジャー」で一気に引き込んだ。「僕が大好きなジャンルなんです」。タカシがサーフィン中、サメに襲われ死に至る-までの原作冒頭のわずか数行分の記述を、大胆にも陽気かつ軽やかなテンポで描いてみせた。

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