闇営業で問われる吉本の運営「6000人の契約書を」

 お笑いコンビ「カラテカ」の入江慎也さんの契約解消に端を発する、一連の反社会的勢力が同席する会合への闇営業問題。テレビ各局の出演者の差し替え、収録済み番組の編集し直しなど、今も波紋が広がっている。同様の不祥事は続々と発覚しており、識者は問題の根深さを指摘する。

 「吉本興業はこれを良い機会として、膿を出せるだけ出すべきだ」と指摘するのは、元毎日放送プロデューサーの同志社女子大学の影山貴彦教授(メディアエンターテインメント論)だ。

 吉本興業ホールディングスの大崎洋会長は、一連の闇営業問題について、訪問先のバンコクで「本当に申し訳なく思うし、個人的にはじくじたる思いもある」と謝罪した。共同通信の単独インタビューに答えたもので、大崎会長は「(会社を)非上場とし、反社会勢力の人たちには出ていってもらった。関わった役員や先輩も追い出し、この10年やってきたつもり」などと話した。

 影山教授は「今後もまだ芋づる式に同様の案件が出てくる可能性はある」とした上で、「SNSなどで一般の人の声を見ていると、問題はもはや、当該芸人というよりも、吉本の運営に関心が向いているのではないか」と解説する。

 影山教授は、今回の大崎会長のコメントについて、「この取材対応はあまり効果がなかったように映る」と指摘。入江さんの契約解消のニュースが出た際に、吉本所属の芸人らが一斉に「契約書なんて見たこともない」とする声を挙げていたが、「吉本が一から出直すためにも、6千人なら6千人分の契約書を作ることが急務。それが芸人を守ることにつながる」と影山教授は話す。

 背景には、それだけ多数の芸人らが、お笑いなどの本業だけではやっていけない実情もある。「仲のいい若い芸人らからも『バイトをしても食べていけない』という声はよく聞く。そういう若い芸人が、何も事情を知らずに、問題のある闇営業に行ったことも考えられる。やってしまったことについては反省が必要だが、吉本は会社としてしっかりと対策を立てて対応することが必要だ」

 吉本興業は6月27日、今回の一連の問題に対し、「決意表明」として、コンプライアンス(法令)順守の再徹底などを打ち出したが、影山教授は「(再発防止に向けた)研修への出席を、“ラジオ体操出席のハンコ”にしてはだめ」と形式主義に陥らないようクギを刺す。

 「社会全体が、ある意味で、のどかだった時代、反社会的勢力との付き合いにしてもおおらかに見られる部分があったが、その時の基準とは時代が変わっている。先輩芸人が『昔はあんなこともこんなこともできた、ヤバそうな営業にも言った』と伝えるのではなく、『ホンマにアカンねん』ということを伝えていかないと。吉本興業は良くも悪くもファミリー。兄さんの言うことなら、命を持った言葉として経験の浅い若い芸人にまで伝わるはずだ」と話す。

 同様に、「今回、(謹慎などの)処分が下った芸人に対し、他の吉本芸人らが直接的ではないにしろ、かばうトーンで話すなどしているが、テレビ局のプロデューサーやディレクターもそうした発言はさせないようにする。今はそのタイミングではないということを指摘していかないといけない」とも。

 肥大化してきた“お笑い帝国”吉本への目は、「業界内外を問わず、厳しさを増している」のが実情。影山教授は「どこかにスクープでまた書かれる前に、きっちりと情報開示することをためらってはいけない」と重ねる。反社会的勢力との決別が、今度こそ求められている。

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