吉本興業社長の「ファミリー」発言に芸人が納得しない理由

 しかし、実際に若手芸人たちに初めて会った際、気さくに話しかけてきたのは、わずかひとりだけだった。その後、自分から芸人に声をかけても「アンタ、誰だ?」というリアクションをされることもあった。

 新人の私に声をかけてくれた一人の若手芸人から、他の芸人を紹介してもらい、徐々に芸人サイドと仲良くなっていった。そして入社から数ヶ月後、それまで話したことがない芸人と食事をする機会があったので、「なんで今まで、声かけてくれなかったの?」と聞いてみた。すると「いや、怖いですよ。声はかけにくいです」と言われた。「えっ、こんなにフレンドリーなのに?」と驚いたのは、今でも覚えている。

 貫禄があって、白髪が生えたスーツを着た大人が相手ならば、20代の芸人が声をかけられないのはわかるが、当時の私はギャル系の服を着た24歳で、会社でキャッキャと騒いでいた女性マネージャーだ。しかし、彼の意見を聞くと、私は事務所に雇われた会社員であり、“目上の存在”なので、声はかけづらいとのことだった。

 私が、「芸人と仲良くしたい! 売れてほしい!」と思っていても、大半の芸人はたとえ若手マネージャーでも、話しかけることに遠慮をしてしまうようだった。この時、私は自分が “会社側”の人間であり、テレビ出演がほぼ無い芸人との間には、見えない壁があるのかもしれないと悟った。

 ◆「ファミリー」という言葉はしっくりこない

 ほとんどの若手芸人は、社会人経験がない。高校卒業後、アルバイトをしながら芸人を目指す、という子がほとんどだった。なので、10代や20代の若手芸人に「スーツを着た大人に話しかけろ。人脈のあるマネージャーに自分を売りこめ」とアドバイスしても、彼らにはハードルが高く、実践することは難しいようだった。

 吉本興業の会社のシステムは分からないが、私の経験上、芸人にとって現場マネージャー(タレントの収録現場につきそうマネージャー)とのコミュニケーションは取りやすく、テレビ局へ営業で動き回っている社員とは、会話をする機会が少ない印象だ。

 現場にあまり顔を見せないベテランマネージャーが、若手芸人に気をかけていても、普段から接する機会が少なければ、距離ができてしまうのは仕方がないことだと思う。社長や会長なら、なおさら遠い存在だと感じるだろう。大きな会社であればあるほど、上と下が接する機会は少なくなり、距離ができるのは必然だ。

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