餅つき、陶芸、フリマ…津波に耐えた古民家から人の輪 福島・いわき市「清航館」の名に込められた思い

 2階の窓から外を眺めると、眼下には太平洋が広がる。港に停泊する船が、規則的に打ち寄せる穏やかな波に揺られていた。

 福島県いわき市の南東部に位置する中之作(なかのさく)地区。ここに築200年を超す古民家がある。かつては豪商が暮らしたという木造2階建て。大きなはりに漆塗りの柱、精巧な作りの神棚や螺(ら)鈿(でん)細工の棚が目を引く。

 名前は「清航(せいこう)館」。ここから始まる-との意味が込められている。人が集い、つながり、その輪が広がる。そんな場所だ。

 「もう諦めなさい」。清航館の管理人で、設計事務所を営む豊田善幸さん(47)は、住人だった高齢の女性にこう諭された。東日本大震災後に、建物を買い取りたいと持ち掛けたときのことだ。

 女性は震災の直前、この家の改築を豊田さんに依頼。「どう直そうか」。思いをめぐらせていたところに大地震と津波が襲う。床上50センチほどまで浸水し、室内は建具が散乱していた。だが、豊田さんは「まだ使える」と確信していた。

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