北海道震度7地震 厚真町の楽団支えたマルチプレーヤー、土砂崩れで死亡の松下一彦さん(63)

 「団員の心の中でずっと生きている」。北海道で震度7を記録した地震で土砂崩れに巻き込まれて死亡した厚真(あつま)町高丘の農業、松下一彦さん(63)は、30年以上にわたって“町の楽団”を支え続けてきた。団員らは悲しみに暮れながらも松下さんの思いを胸に前を向こうとしている。(村嶋和樹)

 松下さんが所属していた「厚真町民吹奏楽団」は、昭和61年に役場職員らを中心に結成。話題を呼んで地元のテレビにも取り上げられ、30~40人ほどの大所帯になった。

 高校時代に吹奏楽部だった松下さんは当初、トランペットからサックス、ドラムまでこなすマルチプレーヤー。

 創設メンバーの一人、矢幅敏晴さん(62)は「足りないパートはなんでもやってもらった」と明かす。しかし、楽団の活動は5年ほどで停滞した。結婚などを機に週2回の練習から足が遠のく団員が増えたためで、「レパートリーを増やせず、楽団としても行き詰まった」(矢幅さん)。

 約2年の充電期間を経て活動を再開し、平成7年からは松下さんが指揮者を務めるように。活動は演奏会のある4~12月に絞り、練習も週1回に軽減した。

 「こんなに難しい曲が演奏できたね」

 団員が音程を外しても、柔和な表情を崩さずタクトを振り続けた。

 今月14日には、町の敬老会でのコンサートが控えていた。「お年寄りが楽しめるように」と「人生いろいろ」「いつでも夢を」といった有名曲を練習。地震発生前の4日には、松下さんが「もう1回練習頑張ろうね」と団員に声をかけたが、それが団員の聞いた最後の言葉となった。

 14日のコンサートは中止になったが、楽団はクリスマスのコンサートでの活動再開を目指している。

 「松下さんはこの楽団のピッチャーで4番。団員の心の中でずっと生きている」

 今年4月に楽団の代表を引き継いだ下司義之さん(58)は前を向いた。

アクセスランキング

もっと見る

ピックアップ