暗闘 ゴーン事件(上)勾留失効直前…ドバイの証言

 昨年春頃、この投資資金の不正流用疑惑に関わった外国人執行役員が幹部らに実態を打ち明け、チームは調査を本格化させる。

 ただゴーンは20年近くにわたり日産のトップに君臨し、社内にも「ゴーン派」が多数存在。「ゴーンに情報が抜ければ終わり」(関係者)のためチームはわずか4人で行動した。司法取引が導入された6月頃、特捜部に情報を持ち込んだ。司法取引は他人の犯罪を明かす見返りに刑事処分を軽くするもので、組織トップの犯罪を摘発することが期待された制度。ゴーンの訴追には打って付けだった。

 外国人執行役員が「協議開始書」に特別背任容疑の「被疑者」として署名し、特捜検事の任意聴取には、弁護人として検事出身の「ヤメ検」が同席した。

 特捜部が特別背任での立件を検討したジーアの疑惑は不動産の名義が日産のままで、帰属や資産評価など立証のハードルが高く見送られた。代わりに浮上したのが「報酬隠し」だった。株主らからの高額報酬との批判を恐れ、22年から8年にわたり総額90億円超も過少に記載していた。

 これに深く関与していたのが、10年以上ゴーンに仕えた元秘書室長だった。捜査関係者が「ゴーンのあらゆる不正を把握するキーパーソンでゴーンそのもの」と表現するほど。捜査協力が必須だった。ただ対応を誤ればゴーンに情報が漏れ、事件が潰れる。このため特捜部が接触を図って説得し、司法取引に合意したのは逮捕前の捜査の終盤だった。

アクセスランキング

もっと見る

ピックアップ