ゴーン容疑者の送金操作、まるで資金洗浄

 日産自動車の前会長、カルロス・ゴーン容疑者(65)がオマーンの販売代理店に日産資金を不正に支出したとされる特別背任事件は、14日で逮捕から10日となる。資金ルートは、租税回避地に設立したペーパーカンパニーや友人の個人口座などが多数介在、複雑化しており、検察関係者は「まるでマネーロンダリング(資金洗浄)」と表現する。一方、ゴーン容疑者は黙秘に転じるなど対決姿勢を改めて鮮明にしている。

「時間の無駄では」

 「お話しすることは何もない」「これは時間の無駄ではないか」「弁護士の助言に従う」

 3月に保釈された後、再び勾留され、東京拘置所(東京都葛飾区)で取り調べを受けているゴーン容疑者。昨年11月の逮捕以降、検事の調べに、ときに激しい口調で容疑を否認してきた。弁護人の高野隆弁護士は今月12日、自身のブログで、取り調べにこう述べて黙秘していることを明らかにした。

 特捜部は今回、これまでとは別の検事を取り調べに当たらせていたが、数日後には最初の逮捕から担当してきた検事を再投入した。ゴーン容疑者が態度を硬化させたためとみられる。

 東京地裁は12日、特捜部が求めた10日間の勾留延長請求を、22日までの8日間に短縮して認めるという特捜部の事件では過去にほとんど例のない決定をした。勾留をめぐっては、弁護側が取り消しを求めて最高裁に特別抗告するなど強く反発してきた経緯があり、事件は裁判所も巻き込み、異例の展開となっている。特別抗告は12日付で棄却された。

同じ住所に40社

 ゴーン容疑者は平成27~30年、子会社の中東日産からオマーン代理店のスハイル・バハワン自動車(SBA)に計1500万ドルを支出させ、うち計500万ドル(約5億6300万円)を実質保有するレバノンの投資会社、グッド・フェイス・インベストメンツ(GFI)に送金させた疑いで再逮捕された。

 GFIからはゴーン容疑者の妻が代表のビューティー・ヨット(BY)に約9億円が流れ、家族で使う大型クルーザー購入費(約16億円)に充てられたほか、米国にある息子の投資会社にも流れた疑いがある。

 SBAに送金された日産資金は、複数のペーパーカンパニーを経由して、ゴーン容疑者と親しいSBAの経理担当幹部の個人口座に流れ、GFIに送金されていた。ここまでの資金移動を担当したのが、このSBA幹部とされる。

 GFIやBYもペーパーカンパニーとされ、BYはタックスヘイブン(租税回避地)として知られる英領バージン諸島に設立されていた。租税回避地は税率が低く、顧客情報の秘匿性が高いため、犯罪収益などのマネロンに利用されやすいことで知られる。

 GFIは、ゴーン容疑者の長年の友人であるレバノンの弁護士の事務所に登記されており、同じ住所には40社以上のペーパーカンパニーが登記されていた。GFIからゴーン容疑者側への資金移動は、この弁護士が担当。弁護士が2年前に死去した後は、女性助手が引き継ぎ、ゴーン容疑者にメールで報告していた。

リーマン・ショック

 「誰も想像しなかった最悪の事態だった」。ゴーン容疑者が今年1月8日に東京地裁で行われた勾留理由開示手続きで語ったのが、リーマン・ショック。ゴーン容疑者は20年10月、私的投資で巨額の損失を負い、取引先銀行から数十億円の追加担保を求められた。特捜部は、中東を舞台にした資金工作の契機になったとみている。

 友人であるサウジアラビアの実業家、ハリド・ジュファリ氏が21年2月、約30億円を提供して信用保証に協力。その後、ゴーン容疑者が使途を決められる「CEOリザーブ」という予備費から約13億円がジュファリ氏側へ送られた。これが1月に会社法違反(特別背任)罪で起訴されたサウジアラビア・ルートだ。

 ゴーン容疑者が頼ったもう1人の友人がSBAオーナーのスハイル・バハワン氏。ゴーン容疑者は21年1月に約30億円を借り入れ、その直後に中東日産を通じSBAへの代金支払いの猶予期間や金利の優遇を指示し、その金利の免除額は10年間で約81億円に上った。さらにSBAを通じ、自身側に日産資金を還流していたとされるのが今回のオマーン・ルートだ。

 「資金援助を受けた中東の友人2人に日産資金で利益供与し、自身にも還流させた疑いがある。2つのルートを解明して事件の全体像が明らかになる」。ある検察幹部は強調する。

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