京アニ「大量殺人」引き起こした犯人の「被害妄想」

 臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップ。心理士の視点から、今起きている出来事の背景や人々を心理的に分析する。今回は、34人が亡くなった「京都アニメーション」放火事件の青葉真司容疑者を分析。

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 7月18日、アニメ制作会社「京都アニメーション」のスタジオを襲った放火犯の炎は、またたく間に34人もの尊い命を奪い去った。

 平成以降最悪の放火殺人事件を起こした犯人は、さいたま市在住の青葉真司容疑者(41)。スタジオ1階でバケツに入れたガソリンをまいた後、「死ね」と叫びながら、火をつけたとみられる。

 確保された際は「小説が盗まれたからやった」と話していたという青葉容疑者は、事件前から近所で目撃されており、現場近くにはハンマーや包丁が残されていたという。強い殺意を持っていたと思われるが、京都アニメーションの社長は「名前を聞いたことがない」と話し、一方的に恨みを持っていた可能性が高い。

 逆恨み、自分勝手な思い込み、そんなもので、これだけの大惨参事を起こしたのか。ニュースを見る度に憤りとやりきれなさがこみ上げてくる。

 青葉容疑者は、12年にも茨城県内のコンビニで強盗事件を起こしている。自首した際、「遊ぶ金が欲しかった。オウム事件の容疑者のように自分も逃げられないと思った」などと不可解な供述をしている。昼間はカーテンを閉め切り、活動は夜。青葉容疑者の印象を「口数も少なく大人しい」と語る人もいるが、住んでいた部屋では近隣住民とたびたび騒音トラブルを起こし、警察官が駆けつけたこともあったという。

 それ以前にも、当時住んでいた集合住宅で真夜中に目覚まし時計を鳴らしたり、壁を叩いたり、大音量で音楽を流すなど、住民の苦情が絶えなかった。京都府警は、「精神的な疾患があるとの情報を把握している」と発表している。

 これだけの情報しかないが、おそらく容疑者には、「妄想」があったのではないかと推測されている。精神医学で妄想は「訂正できない誤った考え」などと定義される。そこでここでは、渡邉和美・高村茂・桐生正幸編著『犯罪者プロファイリング入門-行動科学と情報分析からの多様なアプローチ』(北大路書房)にある、「妄想の周辺と犯罪者プロファイリング」を参考に、青葉容疑者についてみてみようと思う。

 まず、妄想の定義の「訂正できない」の部分は、「自分が誤っているとはまるっきり思っていないため、訂正のしようがない」ことをいい、「誤った考え」の部分は「客観的にみて間違っていること」を指す。この本では、どのように誤っているかによって、妄想を「奇異な妄想」か「奇異ではない妄想か」で分けており、ここでの「奇異」は、「通常の文化の中ではありえないと考えられていること」と定義している。

 奇異な妄想を持つ犯罪者のプロファイリングをみると、彼らの背景や生い立ちから鑑みても、私たちには理解できないことが多く、幻聴や活動性の低下、生活能力の低さが挙げられている。閉じこもりや清潔にできない、ゴミをため込むなどもあるらしい。実際、コンビニ強盗の後、警察の立会いで確認された部屋の中は、ハンマーで壁が壊され、ガラスが割られ、パソコンも破壊され、悪臭がするゴミ屋敷の様相だったようだ。

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