相模原殺傷3年 被告の差別発言に苦悩する被害者家族 

 相模原市の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者19人が殺害され、26人が重軽傷を負った事件は26日で発生から3年を迎えた。殺人罪などで起訴された元施設職員、植松聖被告(29)の裁判員裁判は来年1月から始まるが、依然、植松被告は犯行を正当化する態度を変えず、反省や謝罪の言葉はない。遺族や被害者家族らは差別への懸念を抱え、苦悩を続けている。

 「私たちだけ、幸せでいいのだろうか」。家族会元会長の尾野剛志さん(75)は、事件から3年を迎えるにあたり、苦悩を深めている。

 事件では、息子の一矢さん(46)が、植松被告に腹などを刺され、一時意識不明の重体に陥った。一矢さんは妻のチキ子さん(77)が前夫との間に授かった子で、2人に血のつながりはない。だが、事件翌日、意識を取り戻した一矢さんから「お父さん、お父さん」とか細い声で頼られ、残りの人生を息子にささげようと決意した。

 一命を取り留めた一矢さんは、今、自立生活への道を模索している。夫婦はそんな姿を目を細めて眺めている。ただ、同時に別の感情も湧くという。事件では19人もの入所者が犠牲になった。尾野さんは「一矢にはこれからも人生が待っているが、ご遺族の気持ちを考えると、私たちだけ幸せでいいのか」と語る。

 その見えない心労は、チキ子さんの体にも異変をもたらし、この3年で10キロも体重を減らした。

 それでも、尾野さんは多くの被害者家族が差別の懸念から事件への口を閉ざす中で、実名を明かし、事件の風化を防ごうと、講演などで全国を飛び回る。障害者への無理解を感じる場面もあるが、「少しずつでも差別をなくす活動を続けていきたい」と力を込める。

 こうした中、来年1月には公判が始まる。植松被告は今も身勝手な差別的言動を繰りかえしているが、尾野さんは被害者参加制度で直接訴える考えだ。

 「もしこの先も亡くなった方に謝る意思がないのなら、せめてこれから事件を背負っていくご両親に謝りなさい」。こう呼びかけるつもりだという。(宇都木渉)

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