京アニ放火 国内外から支援も補償・再建に100億円超か 財団設立も視野

 35人が死亡、33人が負傷したアニメ制作会社「京都アニメーション」(京アニ)のスタジオ放火殺人事件から8月1日で2週間となり、京アニへの支援の輪が国内外に広がっている。京アニが支援金を募る専用口座には7月31日時点で11億円以上が入金。業界団体や企業も独自の窓口で募金に協力し、政府も支援に乗り出す方針を表明した。だが、遺族や負傷した社員の補償、会社再建を含めると100億円以上が必要とみられる。京アニは支援金などをもとにした財団設立も視野に被害回復の方法を模索している。

 ■続々と窓口

 京アニは事件後の24日、「支援の声に応えたい」と専用口座を開設。31日午後3時までの8日間で5万6835件の振り込みがあり、総額で11億6654万円に達した。

 提携店舗での買い物などでたまる「Tポイント」の運営会社も「利用者だけでなく、社員からも支援を求める声が上がった」(担当者)ことから、24日に「緊急募金」窓口をインターネット上に設置。1ポイントを1円として寄付でき、31日現在で約1100万円相当の募金が集まった。

 また、IT大手「ヤフー」と業界団体「日本アニメーター・演出協会」も共同で応援募金の窓口を設け、寄付金はすでに約3300万円に。漫画やアニメ関連グッズの専門店「アニメイト」も全国の約120店舗に募金箱を設置した。一般社団法人「日本動画協会」は協会所属のアニメ制作会社などに寄付の協力を要請。協会の担当者は「協会内にはアニメ制作会社も多く所属している。仲間を助けたい」と話す。

 こうした取り組みは海外でも。京アニ作品を含む日本のアニメの海外配給を手がける米企業「センタイ・フィルムワークス」は、支援のためのクラウドファンディングを開始。31日現在で約235万ドル(約2億5500万円)が集まった。

 このほか、京アニ作品の舞台となった滋賀県豊郷(とよさと)町や兵庫県西宮市など全国の「聖地」でも募金活動が行われている。

 ■政府も本腰

 平成以降、最も多くの犠牲者を出した放火事件に対し、政府も支援に乗り出す方針を明らかにした。

 菅義偉官房長官は29日の記者会見で、死傷した京アニ社員らへの補償や経営再建について「よく事情をうかがった上でしっかり関係省庁に対処させたい」と表明。「国内外から寄せられている義援金の受け入れに課題があると聞いており、経済産業省などを通じ、しっかりサポートしたい」とも述べた。支援金に対する課税の優遇措置などを念頭に置いたとみられる。

 一方、厚生労働省京都労働局の南保昌孝(なんぽまさのり)局長は30日の定例会見で、死傷した社員らが「労働災害(労災)になる可能性がある」との見解を明らかにした。京アニ側は労災申請する方針を示しており、労働局側も労災保険の支給認定手続きを進める見通しだ。

 ■必死に戦う

 京アニ代理人の桶田大介弁護士によると、後遺症が想定される社員も複数いるため、補償などが100億円以上になる可能性がある。ただ、青葉真司容疑者(41)=殺人容疑などで逮捕状=には弁済能力がないとみられ、桶田弁護士は「国の犯罪被害給付制度も労災制度も額は限定的。十分な補償を受けることは難しいと思う」と述べる。

 このため、京アニは集まった支援金を遺族や負傷者への補償、会社の再建費用に充てる方針だ。後遺症の長期サポートなども考慮すれば「数十億円規模の財団を形成しないと被害回復は図れない」(桶田弁護士)とみているが、はっきりとした先行きは見えない。

 「手を差し伸べてくださる方々とともに、必死に戦っていきます」。京アニは29日、ホームページで日本語や英語、中国語など6カ国語でコメントを掲載した。国内外からの支援に感謝するとともに、今後もアニメ作品を届けると誓った力強いメッセージだった。

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