京アニ放火で異例の被害者対策 涙ぐむ捜査員、遺品についたすすを拭き取って

 京都市伏見区のアニメ制作会社「京都アニメーション」(京アニ、本社・京都府宇治市)の第1スタジオが放火され、35人が亡くなり、33人が重軽傷を負った事件で、京都府警は異例の態勢で、犠牲者家族や被害者への対応にあたっている。「遺族や負傷者のことを何よりも一番に」。未曽有の大惨事を前に、捜査員たちはときに思い悩みながらも、被害者や遺族のサポートを続けている。

 事件翌日の7月19日に設置された捜査本部の規模は約100人。これとは別に約100人が被害者支援班として犠牲者家族らのサポートにあたっている。その後、被害の拡大などに対応するため、捜査本部の約100人のうち7、8割も被害者支援にあたっている。

 京都府警としては、過去最大規模の捜査本部だが、その大部分が被害者支援に携わるという「今までにない」(捜査幹部)態勢を敷いている。

 捜査本部が設置されている警察学校の体育館には当初は備え付けのクーラーすらなく、猛烈な暑さで厳しい執務環境だという。

 それぞれ担当する遺族や被害者のもとに赴き、心理的ケアなどの対応にあたっている。今後は、裁判などに必要な資料を作成するため、犠牲者の生い立ちなどについての聞き取りなども行っていく予定だ。

 火災で亡くなった犠牲者らの遺体の損傷は激しく、捜査本部は、犠牲者と遺族との対面についても心を砕いてきた。

 場合によっては、遺族に対面を勧めないケースもあったというが、それでも「そんな姿になった子供を親が見なければ、誰も見る人がいなくなる」と対面を願う遺族も少なくなかったという。

 遺体にすがりつく遺族の姿に「遺族のみなさんは本当につらい思いをしている」と涙ぐむ捜査員も。犠牲者が身につけていた所持品も「遺体と一緒にきれいな状態でお返ししたい」と、火災でついたすすをひとつずつ丁寧に拭き取る作業も行ってきた。

 事件から半月以上が経過した今月2日、捜査本部は犠牲者35人中、遺族が承諾した10人について身元を公表(後に1遺族が匿名を希望)。残る25人についても、遺族や会社に働きかけを続けており、了承が得られれば、身元の公表を行っていくという。

 深刻な事例に直面しながら、親身に向き合う捜査員たちについて、「捜査員自身のケアも必要なのではないか」という声もあがるが、ある捜査幹部は「捜査員たちも、疲労はしているが捜査員は交代で休める。遺族はそうはいかない。まずは、関係者の方々のサポートを優先したい」と静かに話していた。

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