30秒後には危機的状況に 京大防災研が煙の流動シミュレーション

 京都市伏見区のアニメ制作会社「京都アニメーション」(京アニ、本社・京都府宇治市)の第1スタジオで起きた放火殺人事件で、出火から30秒後には煙が建物内に拡散していたとみられることが5日、京都大防災研究所の西野智研准教授(建築火災安全工学)による数値シミュレーションで分かった。建物内にいた人はその時点で危機的状況になっていた可能性があるといい、西野准教授は「今後は火災発生から早期に外に退避できるような設計が重要になる」と話している。

 西野准教授は事件後、現場で建物の焼損状況を確認した上で、数値シミュレーションで煙の流動を分析。スタジオ内の1階らせん階段付近でガソリンが燃やされたという想定で、出火から30秒後までに各階に広がった煙の層の高さと温度を予測した。

 その結果、出火から5秒でらせん階段に大量の煙が流入、すぐに2、3階にも上がり、3階には2階よりも早く充満した。煙はいったん3階天井に到達すると、15秒後には腰に近い1・1メートルの高さまで降下。30秒後には2階から上の空間のほとんどが煙で満たされる状態になった。3階の煙の温度は、出火から15秒で100度を上回ったとみられる。

 煙は内階段にも流入し、出火から15秒後には3階から屋上にいたる階段の大部分を満たした。この階段では、20人が折り重なるようにして亡くなっており、屋上を目指した人が避難の途中で有害成分を含む煙に巻かれ、避難が難しい状態に陥ったとみられる。また、らせん階段を通じて高温の煙が拡散したことで、2、3階の可燃物に火が付き、火災が建物全体に拡大した可能性がある。

 第1スタジオは建築基準法に基づき、らせん階段に防煙垂れ壁を設置するなど法令を順守した建物だったが、西野准教授は「法律にのっとった建築物でも、さまざまな火災の可能性を考慮し、自主的に火災安全性を高める工夫が必要だ」と指摘。その上で「吹き抜け空間を作る場合は、避難用の屋外階段や全周バルコニーを設置するなど、火災発生から早期に外に退避できるような設計が重要になる」と述べた。

 事件は7月18日午前10時半ごろ発生。京都府警が殺人などの容疑で逮捕状を取得した青葉真司容疑者(41)が侵入してガソリンをまいた後に爆発が起こり、鉄筋コンクリート3階建てが全焼し、35人が死亡し、33人が負傷。青葉容疑者も全身やけどで治療中で事情が聴けていない。

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