神戸の教諭いじめ 職員室や児童の面前でも堂々と…背景に管理職の甘い認識

 神戸市立東須磨小(同市須磨区)で起きた前代未聞の教諭間のいじめ問題。男性教諭(25)に対する先輩教諭4人からの暴言や暴力は少なくとも1年以上続き、職員室や児童の面前でも堂々と行われた。校長や他の同僚教諭が事態の異常さを把握していたにも関わらず、4人の暴走を止めることができなかった背景には何があったのか。(木下未希)

 ■50件超の被害訴え

 「職員室が怖かった分、毎日子供といる時間が幸せでたまらなかった」。今月10日、被害を受けた男性教諭が児童に宛てた1通の手紙。大学卒業後、同校で教師としての一歩を踏み出した被害教諭を待っていたのは、先輩教諭4人からの壮絶ないじめだった。

 加害側は30代の男性教諭3人と40代の女性教諭1人。児童のいじめ指導などにも携わっていた。

 関係者によると、被害教諭は着任した平成29年から、からかいなどの過度な「いじり」を受けており、昨年春頃から徐々に加害側の言動が過激化したという。羽交い締めにされ激辛カレーを無理やり食べさせられたほか、熱湯の入ったやかんを顔につけられるなど、被害教諭が訴えるいじめ行為は50以上。被害教諭は精神的に不安定になり、今年9月から欠勤。一方の加害教諭4人も有給休暇の扱いで休んでいる。

 今月11日、被害教諭の代理人から被害届が提出され、兵庫県警が暴行容疑で捜査を開始。18日には市教委設置の調査委員会が初会合を開くなど、実態解明に向け動き始めた。

 市は、休んでいる加害教諭4人に給与などが支払われ続けている点に批判が寄せられていることを受け、給与の支払いを差し止める新条例を検討中。久元喜造市長は24日、「加害教諭の行為のおぞましさから見て、(給与支給は)市民の理解は得られない。教壇に立たせるわけにはいかず、早急に対応する」と述べた。

 ■管理職の認識甘く

 いじめの長期化を招いた背景には、校長ら管理職の認識の甘さと対応の遅さが指摘されている。

 昨年度から加害教諭らの行為を見かねた複数の教員が前校長に相談していたにも関わらず、前校長は加害教諭に対して具体的な指導を怠り、市教委にも報告していなかった。さらに被害教諭に「(加害教諭に)お世話になっとるやんな」と念を押し、いじめの相談に取り合っていなかったこともわかった。

 今年4月に就任した仁王美貴校長(55)も7月、被害教諭との面談で状況を把握したにも関わらず、加害教諭4人への口頭注意のみにとどめていた。仁王校長は9日の会見で、「赴任当初から加害教諭は職員室の中で悪い言葉遣いや高圧的な態度が見られた」としつつも、「悪質ないじめが行われているとは気がつかなかった」と釈明。被害教諭のSOSが届くことはなかった。

 ■変わらぬ隠蔽体質

 「不祥事が二度と起きないよう組織風土と学校現場を抜本的に改革する」。18日に開かれた調査委の初会合で長田淳教育長はこう強調したが、市民の間では不信感が拭えない。

 平成28年10月、神戸市立中3年の女子生徒=当時(14)=が自殺した際には、市教委が当時の校長にいじめの内容を記した調査メモの隠(いん)蔽(ぺい)を指示していた問題が発覚。今回も、市教委が具体的な聞き取りや対策を講じなかったことに批判があがっている。

 また、「神戸方式」と呼ばれる独自の教員の人事異動方式が問題の一端になったとの指摘もある。勤務校と異動先の校長が協議して異動案を決め、市教委が追認する方式だ。「校長の権限が強くなる」とされ、教育現場の隠蔽体質を助長していると声も出ている。

 問題の背景を、近畿大教職教育部の丸岡俊之教授は「保護者の厳しい目や評価を気にして学校現場だけで抑えようと問題を矮(わい)小(しょう)化する傾向がある」と説明。その上で、「現場の教員が市教委に直接被害を訴えるのは難しいケースもある。外部にも複数の相談窓口を設け、周知を徹底するなど二重三重の救済システムが必要」と強調している。

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