都市部の河川決壊、対策は万全か

 気象庁が「50年に1度」と警戒を呼びかけた大雨をもたらした台風19号で、東日本を中心に河川の氾濫や決壊が相次いだ。このため広範囲の地域が浸水し、90人以上が命を落とした。こうした災害は、今後日本各地でも起こりうる可能性が指摘されている。関西での対策は万全なのか。

 「あのときは道路に水があふれてきて驚いた。台風19号も決して人ごととは思えない」。堺市堺区の女性(80)は、平成29年10月に上陸した超大型台風21号を振り返る。

 大雨で大和川が氾濫し、下流域の同区で道路が冠水するなどした。大和川流域に洪水被害をもたらした昭和57年7月の水害を受け、堺市は平成2年ごろ、女性宅周辺の支流流域に鉄製の堤防を完成させていた。だが、女性は「堤防があっても、台風のたびに不安な気持ちでいっぱい」と話す。

 台風19号をめぐっては、13日時点で、堤防の決壊が71河川の140カ所に及んだ。「関西でも同時多発的な河川の氾濫や決壊は起こりうる」。国土交通省近畿地方整備局河川計画課の橋爪翔課長はこう警鐘を鳴らす。

 同局では、管轄する6ダム、15河川について、浸水想定区域を設定。このうち複数の支流があり、滋賀県と京都、大阪両府を流れる淀川については、「200年に1度の雨」(24時間平均雨量約260ミリ)が降り続いた場合、堤防の決壊などで、周辺の約2700ヘクタール、約15万戸以上の家屋が浸水、経済損失は約7兆円に上る-との試算もある。

 国交省によると、国が管理する河川で堤防が必要な区間計約1万3千キロのうち、堤防の大きさが計画水準に達していなかったり、堤防自体が設置されていなかったりと、200年に1度レベルの大雨に対応できない区間が3月末時点で約3割にも上る。

 昨年7月の西日本豪雨の被害を受け、同局は今年度、整備費用として約240億円を計上した。

 また、対策の柱として淀川と大和川では、従来の堤防にさらに盛り土を施して堤防自体の厚みを増すことで決壊を防ぐ「高規格(スーパー)堤防」の計画が進む。一般的に盛り土で整備された堤防は一定以上の水位に達すると浸食などで決壊するケースもあり、スーパー堤防はこうした被害を食い止める役割が期待される。

 淀川流域では、大阪府内の川岸約22・8キロに整備する計画が進行しているが、整備済みはわずか約1・4キロで、完成時期は数百年後とされる。全国でも同じ計画が進むが、全整備は遠い先の話だ。

 防災システム研究所の山村武彦所長は「想定を超える異常気象の頻発に、国や自治体が住民を守ることへの限界が浮き彫りになりつつある」と説明。そのうえで、「個別のリスクに応じた具体的な対策や行動を住民に示すことが行政には求められている」と指摘する。

 近年、全国の計8整備局は地域住民に速やかな避難を促す対策にも力を注ぐ。

 近畿地方整備局では災害時に地元テレビ局に職員が自ら出演して事態の切迫性を直接訴える取り組みを行うほか、新聞に「QRコード」を掲載したり、会員制交流サイト(SNS)を活用したりして、災害防災情報を入手しやすくする試みも始めた。橋爪課長は「未曽有の水害を完全に防ぐのは難しいが、ハード、ソフト両面で被害を最小限に食い止める努力を続けていくしかない」と強調している。(吉国在)

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