露幹部職員出国で全容解明困難も「覚知遅れれば、もっと情報取られていた」 ソフトバンク漏洩

 事件のキーマンとされる在日ロシア通商代表部幹部職員の男が出国した可能性が強まり、全容解明は困難になった。ただ、警視庁が情報を提供したとみられるソフトバンク元社員を逮捕したことで、米国に依存しないインターネット網の確立を目指すロシア側に、これ以上の日本の技術情報流出を阻止した側面もあるとみられる。捜査関係者は「覚知が遅れていたら、より機微に関わる情報を取られていた」と事件を捉えている。

 「この程度でお金をもらえるなら、いいと思った。小遣い稼ぎだった」

 逮捕されたソフトバンク元社員の荒木豊容疑者は警視庁公安部のこれまでの調べにこう供述している。ロシア側との接点は数年前。同部の40代の元職員(平成29年に帰国)が偶然を装って声をかけたとみられる。

 元職員の帰国後は、アントン・カリニン幹部が引き継ぎ、2~3カ月に1回のペースで飲食接待を重ねた。当初は会社パンフレットのような、誰でも入手可能な資料を求め、それだけでも数万円の現金を渡していたとみられる。

 カリニン幹部は自身の身分はおろか電話番号やメールアドレスも告げず、次回の飲食の場所は、会うたびに口頭で決めていたという。荒木容疑者は「ロシアのスパイかもしれないと思っていた」などと供述する一方、自宅で人知れずパソコンを使い、社外秘情報を持ち出すまでの関係性になっていたとみられる。

 漏洩(ろうえい)した情報は、電話基地局など通信設備の設置にかかる作業を省力化するための作業手順書などとされる。手順書には基地局内の通信ケーブルの配線など、内部環境も一部、記されていたとみられ、ソフトバンクは社外秘としていた。

 「米国のシステムと完全に分離可能なインターネットの確立」をサイバー安全保障の指針に掲げるロシアにとって、今回の事件が需要に見合うと指摘する声もある。

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