両親思い、優しい介護士も犠牲に 熊本・人吉の湯本秀子さん

 熊本県人吉市中神町の湯本秀子さん(61)は高齢の両親と一緒に避難した後、飼っていた猫の身を案じて自宅へ戻り、豪雨の犠牲となった。「無理してでも止めるべきだった」。母親はやるせない思いに駆られている。

 氾濫した球磨(くま)川沿いの自宅で両親と同居していた湯本さん。母の美代子さん(81)によると、約20匹の猫をかわいがっていた。両親思いの性格で、耳の遠い2人をいつも支えていたという。

 一家3人は4日午前5時半ごろ、近くの小学校に身を寄せた。しかし、猫のことが心配になった湯本さんは、いったん帰宅。「すぐに帰ってくる」。そう言って別れたのが美代子さんが見た娘の最期の姿だった。

 それから数時間後、自宅にいた湯本さんは友人と電話で話をし、「まだ大丈夫」と答えていたという。だが、昼ごろには連絡が途絶えた。水が引いた後、被災した自宅近くで亡くなっているのが見つかった。

 湯本さんは介護士として市内の特別養護老人ホームで勤務。ショートステイの利用者を担当していた。理事長の簔田義清さん(61)は「穏やかな性格で、利用者にも丁寧に接していた。ショック以外の何ものでもない」と言葉を絞り出した。

 美代子さんは「本当にやさしい子で、いつも尽くしてくれていた。家に戻るのを止めていたらと思うと…。何とも言えない」と力なく話した。(前原彩希)

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