被災した熊本の人吉新聞、避難所に無料紙面配布

 豪雨災害に見舞われた熊本県人吉(ひとよし)市と球磨(くま)郡を主要な発行エリアに持つ地元紙「人吉新聞」が奮闘している。被災した社員もいる中で、日々の新聞制作を継続し、避難所にも直接配達。「待っている人たちに情報を届けたい」。その一心だという。(前原彩希)

 「きょうの人吉新聞が届きましたよ」

 11日午後5時ごろ、同市城本町の市立人吉西小学校の体育館。避難所となっている同小にアナウンスが流れると、数人の避難者が机に積まれた新聞を手に取った。

 同市上青井町の中川陵さん(77)は「自分で見に行けないから、知っている場所の現状を新聞で知るんです」。同市下青井町の江嶋信子さん(81)も、「いつも本当に楽しみ」とじっくりと読み始めた。

 人吉新聞は昭和33年創刊。人吉市と球磨郡の計10市町村をエリアとし、タブロイド判8~16ページの夕刊約1万3500部を発行する地方紙だ。

 熊本県などに大雨特別警報が出た4日朝、同社の村坂賢二編集部長(59)は社員らの安否確認を進めるとともに、「出社前に各地の状況を見てきてほしい」と指示。その日の紙面には、記者たちが撮影してきた水にのまれた街並みの写真が並んだ。

 印刷機能を持つ市内の本社こそ無事だったが、記者ら社員5人と石蔵尚之社長(55)はいずれも自宅が浸水するなどの被害を受けた。新聞を取次店に運ぶパート従業員らも被災したため、刷り上がった新聞の部数を数えて束ねて袋に入れ、各戸へ配達するという一連の行程は、社員らが部署の垣根を越えて補っている。

 石蔵社長の方針もあり、6日から市内、10日から同県多良木町、11日からは同県球磨村と、計10カ所の避難所への無料配布も開始。編集部員らが手分けして、計千部の新聞を届けている。中には全てなくなる避難所もあるという。

 紙面に掲載するニュースには、どの温泉施設が営業しているかなど地元密着の細やかな情報も。社員らが各施設を回り、営業状況を一つずつ確認してまとめたという地域紙ならではの徹底ぶりだ。

 池上佐和子総務部長(65)は「人吉新聞は地元の人たちの情報源。地域の新聞だという使命感があり、みんな一丸となって協力している」と話した。

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