遠くで位置確認「見張り」に当たらず GPSストーカー事件で最高裁

 女性の車に衛星利用測位システム(GPS)を取り付けて居場所を知った行為が、ストーカー規制法の禁じる「見張り」に当たるかどうかが争われた2件の刑事事件で、最高裁第1小法廷(山口厚裁判長)は30日、見張りを「相手の家の付近など一定の場所で動静を観察すること」とし、遠くからGPSで居場所を把握するだけでは見張りに該当しないとの判断を示した。2件とも見張りと認めなかった2審福岡高裁判決が確定する。

 同法は、住居や勤務先など相手が「通常所在する場所の付近」で見張ることを禁じているが、GPSに関しては明確な規定がなく、これまで司法判断も割れていた。

 第1小法廷は、同法の条文に沿って見張りの要件を「機器を使う場合でも、相手の住居の付近など一定の場所で相手の動静を観察する行為を要する」と指摘。いずれの被告も、離れた場所からGPSを確認していたことなどから要件には当たらないとし、検察側の上告を棄却した。

 事件では、被告2人が当時の妻や元交際相手の車に無断でGPSを取り付け、位置情報を把握した行為が問われた。1審の福岡、佐賀地裁はいずれも見張りに該当すると認定して有罪としたが、2審福岡高裁は該当しないと判断。福岡地裁で審理された当時の妻に対する事件では、被告が実際に近くで注視した行為の部分を有罪とした。佐賀地裁で審理された元交際相手に対する事件は1審判決を破棄し、差し戻した。

 最高検の畝本直美公判部長は「誠に遺憾だが、真(しん)摯(し)に受け止めたい」などとするコメントを出した。

 ◇被害者に不安「法改正を」

 GPSでの居場所確認はストーカー規制法違反にはならないとした30日の最高裁判決。これまで取り締まりの対象としてきた捜査当局や被害者側にとっては厳しい判断で、法改正を求める声が高まりそうだ。

 GPS機器は本来、子供や高齢者の見守りなどに使われ、警備会社でレンタル契約できるほか、インターネットでも購入できる。近年はスマートフォン用のアプリも登場し、相手のスマホにインストールさせれば居場所を確認できる。

 こうした技術の普及を背景に、GPSを悪用したストーカー犯罪も表面化。今回の被告の一人は、元交際相手の車を追跡したが気づかれたため、たばこの箱ほどの大きさの機器を取り付け、約10カ月間にわたり600回以上も位置情報を検索していた。

 上告審での検察側の主張などによると、GPSでの位置情報把握を見張りとした同法違反事件は、平成26年からの約4年間で37件の有罪が確定。警察側がGPSでの位置確認を理由に警告などを出したケースもあるとみられる。検察側は、機器で「被害者の日常生活をほぼ全面的に把握できる」とし、規制対象にならなければ「被害を受けた人たちに不安を与え、位置確認から凶悪犯罪にも発展しかねない」と訴えていた。

 甲南大法科大学院の園田寿教授(刑法)は「刑事法は厳格解釈しなければならないという大原則に沿った妥当な判決」と評価。ただ、「GPSで位置情報を把握されるだけでも被害者には絶望的な不安を与える。判決で改めて法の穴が明らかになった。国は法改正に着手すべきだ」と述べた。

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