所在不明だった不染鉄の帝展入選作「仙人掌」、個人宅で発見

 郷愁を誘う風景を緻密に描いた傑作を残したが、各地を転々としたために謎に包まれている日本画家、不(ふ)染(せん)鉄(てつ)(1891~1976年)の帝展入選作で、所在不明だった「仙(せん)人(にん)掌(しょう)」(二曲一隻)が奈良県内の個人宅で見つかったことが分かった。

 不染は今夏、東京でも回顧展が開かれ、初期の作品も見つかるなど、「幻の画家」として注目が高まっている。「仙人掌」は、奈良県立美術館(奈良市)で開催中の特別展で初公開されている。

 「仙人掌」は縦168センチ、横179センチの屏風作品。昭和7年頃から戦時中に住んだ東京で、庭に温室を設けてサボテンを育てた様子が描かれ、画中下部にこの家に移ったことなどを記している。不染には自然や田舎の家を描いた作品が多いなかで、東京の近代的な家を描いており、異色の作品という。

 不染は東京の寺に生まれたが、画家を志した。若い頃に伊豆大島に渡り漁師をするなどして生活。京都市立絵画専門学校(現・京都市立芸大)を首席で卒業し帝展で活躍したが、戦後は画壇を離れ、奈良で創作を続けた。伊豆大島から見た富士山や山里、海を俯(ふ)瞰(かん)的に描いた「山海図絵(伊豆の追憶)」など、自然と人の営みに温かなまなざしを向けた作品で知られる。

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