第30回世界文化賞 受賞者の素顔・彫刻部門 中谷芙二子氏

 “霧のアーティスト”として世界に知られる。米ノースウェスタン大学美術科を卒業後、初期の絵画制作を経て、技術者ビリー・クルーヴァー、芸術家ロバート・ラウシェンバーグ(第10回世界文化賞受賞者)らにより結成された、芸術と技術の協働を推進する実験グループ「E.A.T.」に参加。活動の一環として1970年の大阪万博ペプシ館で、初めての人工霧による「霧の彫刻」を発表。白い霧でパビリオンをすっぽり包んだ。

 高圧ポンプと独自に開発した微粒子ノズル群によって人工の霧を発生させる。霧は、気象条件や地表の凹凸、樹木などその場の環境を読み取り、風に寄り添い、大気と響き合って刻一刻と姿を変える。見えるものが見えなくなり、風のように、見えないものが可視化されてゆく。

 つまり環境が彫り出す霧の千変万化こそが「霧の彫刻」であり、最後は自然に委ねるのが作法という。環境彫刻、インスタレーション、パフォーマンスなど世界各地で80を超える霧作品群は、人と自然と取り結ぶメディアだ。「最近ようやく霧の言葉が少し分かるようになった」と語る。こうした環境への関心は、世界で初めて雪の人工結晶を作った実験物理学者の父、中谷宇吉郎(1900~62年)の影響が大きい。

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