探査機「みお」が向かう水星は謎だらけ 磁力と大気の解明に挑む 

【びっくりサイエンス】

 打ち上げが迫った宇宙航空研究開発機構(JAXA)の水星探査機「みお」。日本が初めて挑む水星は、どんな惑星なのか。解明が期待される磁力や大気などの謎を探った。

■予想覆した磁力の発見

 水星は太陽系で最も小さい惑星。直径は地球の約4割で、月より少し大きい程度。表面は無数のクレーターで覆われ、月にそっくりだ。太陽に近い上に1昼夜が176日と長いため、温度は427~マイナス173度と寒暖差が非常に激しい。

 水星の存在は紀元前から知られていたが、太陽に近いため、地上から望遠鏡で観測すると太陽光に邪魔されてしまうこともあって、まだ分からないことが多い。最大の謎は磁力のメカニズムだ。

 地球の内部では、高温で溶けた鉄などの金属が対流して電流が発生し、その影響で磁力が生じている。1本の棒磁石が南北方向に埋め込まれているような状態で、方位磁石のN極が北を向くのはこのためだ。

 これに対して水星はサイズが小さいため、内部の金属は既に冷えて固まり、対流はなく磁力は生じないと考えられていた。

 ところが1974年、史上初の水星探査機である米マリナー10号が驚くべきデータを送ってきた。当時の科学では説明できない磁力が水星の周辺で観測されたのだ。翌年の探査で、水星自身が磁力を持つことを突き止めた。

 予想を覆す発見に科学界は沸いた。だが水星になぜ磁力があるのかという大きな宿題が残った。溶けた金属の対流が、わずかでもあるのだろうか。2011~15年の米探査機メッセンジャーによる観測では、磁力の中心は地球と違って、北に偏っていることが判明。その原因も不明で、謎は深まるばかりだ。

■小さいが極端に重い

 水星のもう一つの大きな関心は密度だ。岩石を主成分とする太陽系の惑星は4つあり、このうち地球と金星、火星は大きさと密度が比例関係にある。しかし水星だけは内部に金属が多いため、大きさの割に密度が異常に大きい。重さに占める金属の割合は、地球は3割強だが、水星は実に7~8割を占める。

 なぜこんなに重いのか。惑星は46億年前の太陽系誕生時に、小さな天体同士が衝突・合体して生まれたが、水星ができる際は岩石の多くが飛び散り、金属は合体しやすかったためなどの説があるが、真相は分かっていない。水星の磁力は、密度が高いことに関係があるとの見方もある。

 大気の存在も注目の的だ。望遠鏡による1980年代の観測で、水星にはナトリウムなどを成分とする大気があることが分かった。それまでは水星は重力が小さいため、太陽から届く水素やヘリウムなどを除き、大気を引きつけておくことはできないと考えられていた。

 ただ大気があるといっても、密度は地球の1兆分の1にも満たない。「ほとんどない」といってもいいほどで、近年の高校の教科書にも、水星には大気がないと書かれている。

 わずかながらも固有の大気が存在する仕組みは、よく分かっていない。解明すれば、大気が生命を育む地球の歴史の理解にもつながると期待されている。

■史上最も詳しい探査へ

 太陽のすぐ近くを回っている水星の探査は、高温対策や軌道で多くの困難があり、探査機はこれまで2機しかない。火星や金星に比べると、研究はかなり遅れている。

 こうした中、日本の探査機「みお」は欧州の探査機とともに、かつてない詳細な探査を目指しており、世界の科学者から大きな期待が寄せられている。

 水星は1昼夜が地球の176日もあるのに、その半分の88日で太陽を1周する。つまり1日の長さは1年の2倍で、これだけでも実に風変わりな惑星だ。地球の常識では考えられない面白い姿が、日欧の探査で見えてくる予感がしてならない。(科学部 草下健夫)

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