北海道に日本初の宇宙港構想 好条件生かし「北の種子島」目指す

【びっくりサイエンス】

 太平洋に面した北海道大樹(たいき)町といえば“宇宙の町”として知られている。この地で宇宙航空研究開発機構(JAXA)が実験を繰り返し、ベンチャー企業「インターステラテクノロジズ」も国内初の民間ロケット打ち上げを目指す。そして今、宇宙関係者の注目を集めているのが既存の施設を大幅に拡充した日本初の“宇宙港”構想だ。

太平洋沿いに複数の射点

 構想を練っているのは大樹町と協力関係にあり、研究者や経済関係者らでつくるNPO法人「北海道宇宙科学技術創成センター(HASTIC)」。ロケットを打ち上げる射点の増設と滑走路の大幅な延長が柱となる。

 既に町には太平洋に面した「多目的航空公園」が設けられ、長さ1000メートルの滑走路があるほか、付近にはインターステラテクノロジズが使う小型ロケットの射点も存在する。

 構想でまず行うのは、この射点の拡充だ。同社が現在目指すのは、民間単独で国内初となる高度100キロ以上の宇宙空間への到達。この場合、打ち上げたロケットは宇宙に到達後すぐに重力に引かれ、放物線を描くようにして太平洋上に着水する。

 だがこれとは別に、同社は2020年ごろを目標に超小型衛星用のロケット打ち上げも目指している。衛星を軌道に投入するには重力を振り切る必要があり、より大きな機体が必要だ。

 そこで衛星打ち上げ用ロケットの開発に使う新たな射点を建設し、早ければ19年11月に完成させる。整備費は3億~5億円を見込む。

 これに続くのが、東へ数キロの場所に21年の完成を目指す商業打ち上げ用の小型ロケット射点と、26年の完成を目指す中型ロケット向けの射点だ。

 このうち中型ロケットは、大型車両からロケットを打ち上げる移動式発射台の使用を見込む。そのため小型用も含めた射点の整備費は40億~50億円を見積もるが、大半は道路や土地の排水工事などのインフラ建設に使われる。

 構想ではさらに先の話として、大型ロケットの射点建設も視野に入れている。

日本版シャトルの滑走路

 同時並行で進めるのが滑走路の大幅な延長だ。22年に2500メートル、26年には3000メートル級まで延ばし、超音速無人機や、退役した米スペースシャトルのような航空機型の機体で宇宙を目指す「スペースプレーン」などの離着陸を想定する。重たい大型旅客機が何度も離着陸するわけではないため、整備費は200億円以内に収まるという。

 特に需要が見込まれるのは、人間を乗せて高度100キロ程度の宇宙空間に向かう「日本版シャトル」だ。国内では、いずれも20年代の商業飛行を目指すベンチャー企業の「PDエアロスペース」(名古屋市)や「スペースウォーカー」(東京都)などが開発を急いでいる。もしかしたら、これらが大樹町から飛び立ち、宇宙を往復する時代が来るかもしれない。

打ち上げに好条件、自民党も注目

 大樹町を宇宙開発の拠点として期待する向きは、自民党内にもある。昨年4月に党の特別委員会が出した提言では、鹿児島県の種子島や内之浦に続く新たな打ち上げ場所の候補地として同町が挙げられた。

 背景にあるのは、地元の理解に加え、打ち上げに適した好条件だ。同町は南と東に広大な太平洋が広がり、打ち上げたロケットが安全確保のため陸地を避けて軌道を曲げる必要性が低い。特に地球観測を行う衛星で需要が多い南側に向けた打ち上げでは、鹿児島からよりも重い衛星を運べるという。

 もう一つの好条件は、広大な敷地の存在だ。射場や滑走路の予定地周辺は人家がほとんどない。

 もちろん多額の整備費をはじめ、保安林の解除や農地の転用といったさまざまな課題も存在する。それでもHASTIC特任理事を務める北海道大の伊藤献一名誉教授(機械工学)は「国だけでなく、民間宇宙開発の拠点となることを期待している。日本の宇宙開発全体の発展につなげたい」と話す。

 宇宙ベンチャーの躍進と歩調を合わせながら、大樹町が「北の種子島」となり得るか、今後の動向に注目だ。(科学部 小野晋史)

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