岡崎恒子・名古屋大特別教授 DNA複製の謎解明 「岡崎フラグメント」発見

【科学の先駆者たち】

 遺伝子の本体であるDNAの鎖が、短い断片ごとに複製されて連結する仕組みを発見し、生命現象の大きな謎を解明した岡崎恒子名古屋大特別教授(85)。分子生物学の黎明(れいめい)期から活躍したリケジョ(理系女子)の草分け的存在だ。共同研究者である夫、令治さんを40代の若さで亡くし、幼い子供を抱えながら、夫婦で取り組んできた研究を完成させた。

逆向きの仕組みに挑む

 DNAの複製では、二重らせん構造が解けて、それぞれの鎖を鋳型として新しい鎖が作られる。2本の鎖はそれぞれ逆方向に複製が進むが、一方向の複製を促す酵素しか見つからず、逆向きの複製はどのように進むのかは分かっていなかった。

 逆向きの複製を進める酵素が発見されていないだけなのか、それとも別の仕組みで複製されるのか。1963年、米国留学から戻ったばかりの岡崎夫妻は名古屋大で研究室を立ち上げ、この謎の解明に取り組んだ。夫妻が立てた仮説は、既に発見されている酵素により短い鎖が作られ、それが一本につながるという不連続複製モデルだ。

 研究開始と時期を同じくして、岡崎さんは第一子を出産。妻として研究者として母として奮闘する日々が始まった。昼夜を問わず研究室に詰めるときは、「研究室に大きな段ボールを置いて、その中で子供を遊ばせた」と当時を振り返る。

夫婦でみつけた「岡崎フラグメント」

 DNAの複製は細胞内で猛スピードで進む。低温にすることで速度を下げ、DNAの鎖を短いままで大量に検出する実験に成功した。こうして発見したのが、今では「岡崎フラグメント(断片)」と呼ばれるDNAの短鎖だ。

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