脊髄損傷、慢性患者の治療にも一歩 慶応大のiPS臨床研究

 手足のまひなどが生じ、重症の場合は車いす生活を余儀なくされる脊髄損傷。治療は症状が出てから時間が経過するにつれて難しくなる。iPS細胞を使った今回の臨床研究は比較的早期の患者が対象だが、障害が慢性化した患者の治療に向けた大きな一歩となる。

 脊髄が損傷すると、神経細胞は損傷部だけでなく、その周辺でも炎症が起きて死滅し、症状が悪化していく。このため国内約20万人とされる慢性期の患者は現在、治療法が困難とされる。

 しかし慶応大チームは昨年11月、今回と同じ方法で、人の慢性期に当たる脊髄損傷マウスの治療に成功したと発表。岡野栄之教授は「慢性患者への治療法を切り開くことができた」と手応えを話す。

 日本せきずい基金理事長で、自身も慢性患者の大浜真氏は「今回の臨床研究で安全性や有効性が確認されれば、慢性患者の治療につながる可能性が開ける。新しい治療法の確立が待ち遠しい」と期待を寄せる。

 脊髄損傷の治療では昨年12月、札幌医科大と医療機器大手ニプロが共同開発した細胞製剤が承認された。患者から採取した特殊な幹細胞を培養して点滴し、神経細胞の炎症を抑えたり再生を促したりする。年内の実用化が目標だ。

 患者自身の細胞を使うため拒絶反応は起きないが、損傷部に集まるのは全体の数%とみられ、膨大な数の細胞が必要になり、培養に時間と手間がかかる。

 一方、慶大の治療法は他人由来のiPS細胞を利用するため拒絶反応が起きる可能性がある半面、細胞は損傷部に直接移植するため少なくて済む。2つの治療法が実用化すれば、患者の状態を慎重に見極め、適切に使い分けていくことになりそうだ。(伊藤壽一郎)

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