「東京 芝 とうふ屋うかい」大都会の真ん中、江戸情緒が息づく

 【フード 食・名店】

 江戸時代の中頃に人気の花が咲いた豆腐は、いまでは日本の食文化に欠かせない。その奥深い魅力を目と舌で楽しめる豆腐会席の料理店が、大都会の真ん中にある。江戸情緒が息づく華やかな空間、大豆の甘みとうまみを優しく引き出した格別な味わいは、名店ならではだ。(榊聡美)

 ◆1500坪の日本庭園

 縁起の良い松竹梅の植栽が客を迎える長屋門をくぐると視界が開け、東京タワーが迫る。その下に広がる純和風の庭園。江戸時代にタイムスリップしたかのような風情を感じながら「東京 芝 とうふ屋うかい」の母屋にたどり着く。

 「山形県米沢市にあった築約200年の造り酒屋を移築したものです。広間がある母屋の他に個室の離れが58部屋。約2千坪の敷地のうち1500坪くらいは庭で緑が多く、働いている私たちも癒やされます」

 女将(おかみ)の星野友香さん(39)は穏やかな笑みをたたえながらこう教えてくれた。

 江戸情緒あふれる空間で供される自家製豆腐も、非日常の特別な味わいだ。大豆の優しい甘みと濃厚なうまみ、豊かな香り。食べ慣れた豆腐とは一線を画すおいしさは、日本人はもとより、海外から訪れるグルメをもうならせ、和食の奥深さを伝えている。

 ◆国産大豆を厳選

 豆腐は、古くから「武蔵国・大和田に名水あり」と言われた、八王子市大和田町の自社工場で毎日作られている。鍵となる大豆について、料理長の藤田信(まこと)さん(45)は、「全国の産地へ足を運んでさまざまな品種を探し回り、独自の味を追求しています」

 上質な国産大豆の中から豆腐や油揚げなど用途に応じて、個性のある品種を使い分ける。単一だけでなく、数種類をブレンドするものも。さらに、その年のできによっても品種を変える。豆は一般的な豆腐の1・5倍ほどの量を使い、豆乳とおからに分離するときは固く搾り切らないというぜいたくな作り方。こうして生まれた雑味のない濃い豆乳を天然にがりで固め、唯一無二の豆腐を作り上げる。

 ◆和のおもてなし

 店では手を加え過ぎず、豆腐のおいしさを生かし切る。名物の「あげ田楽」は、工場から届いた油揚げを中庭に設(しつら)えた「田楽処」で、丹念に炭火で焼く。焼きたて熱々を各テーブルへ。パリッ、サクッ…水分が飛んだ表面の軽さと、芯の豆腐のしっとりした食感とのコントラストが新鮮だ。

 「豆水(とうすい)とうふ」は豆乳のだしを張った土鍋で豆腐を温めていただく。ふくよかな味わいの豆乳とだしのうまみが豆腐の甘みを一層引き立てる。豆腐と豆乳の味を日々確かめて、ブレのない最上の味に仕上げている。

 「豆腐は生き物。時間との勝負です。工場から厨房(ちゅうぼう)、接客まで協力して、良い状態で召し上がっていただく努力をしないと、感動を得られる味にはなりません」と藤田さん。心を合わせた日本ならではの「和」のおもてなしが、繊細なおいしさを支えている。

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 ■東京 芝 とうふ屋うかい 東京都港区芝公園4の4の13。平日昼は午前11時45分~午後3時、夜は午後5時~7時半、土・日・祝日は午前11時~午後7時半(いずれもラストオーダー)。平日限定の昼のコース「竹」(5940円)は女性に人気。夜の会席は1万800円~(いずれも税込み・サービス料別)。月2回月曜定休。03・3436・1028。

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