仁徳陵「全景見たい」 ヘリや気球での遊覧飛行検討

 世界文化遺産登録がほぼ確実になった「百舌鳥(もず)・古市古墳群」(大阪府)。国内最大の前方後円墳を中心に大小の古墳が密集する雄大な景観が魅力の一つだが、大きすぎて地上からでは全体像をつかみにくい。「上空から見てみたい」との要望や登録による集客増を見込み、地元ではヘリコプターや気球による遊覧飛行などを検討している。(有年由貴子)

 「ニュースを見て駆けつけたが、やはりとても大きい。何か象徴的なものでも見て帰りたいのですが…」

 国連教育科学文化機関(ユネスコ)諮問機関のイコモスによる世界遺産登録の勧告が明らかになった14日。古墳群で最大の仁徳(にんとく)天皇陵古墳(大山〈だいせん〉古墳、堺市堺区)を訪れた埼玉県川越市の教員、小林伸和さん(54)は撮影スポットを探しながらつぶやいた。

 エジプトのクフ王のピラミッド、中国の秦の始皇帝陵とともに世界三大墳墓の一つに数えられる仁徳陵は、最大長840メートル、最大幅654メートル。拝所のそばには全体像を示した航空写真が掲げられているが、宮内庁が管理する天皇陵のため敷地内に入場はできない。木々に覆われた巨大な墳丘が遠目に見えるのみだ。

 仕事帰りに訪れた近くの男性会社員(61)も、「まだ全景を見たことがない。これから観光客も増えるだろうし地元のPRのためにも気軽に見られるようになればいい」と話した。

 堺市によると、おなじみの「鍵穴」など仁徳陵の全景を近くで見るには、日本一高いビル「あべのハルカス」(大阪市阿倍野区)に匹敵する地上300メートル以上から眺める必要がある。

 周辺に高い展望施設はなく、一般開放されている堺市役所(堺市堺区)の21階展望ロビー(地上約80メートル)から見下ろせるが、「大きな丘のようで全体像までは見えない」(市担当者)。市は仁徳陵近くの市博物館で、ドローンで撮影した映像を使い、上空から眺めているような疑似体験ができるコーナーを設置している。

 ただ、「実際に目で全景を見たい」という市民からの要望は強い。現時点では、民間事業者が実施している遊覧飛行を利用する以外になく、朝日航空(大阪府八尾市)によると、チャーターしたセスナ機で八尾空港(同)を出発し仁徳陵周辺を18分かけてめぐるコースは大人8400円。「一度見てみたい」「子供に見せたい」といった需要が多いという。

 世界遺産登録を目指す機運醸成のため、堺市は昨年10月、民間業者によるヘリコプターや気球の遊覧飛行の試行を企画した。ヘリで地上500メートル付近から古墳群を眺めるツアー(大人6500円)に市民ら計約200人が参加。アンケートでは9割以上が定期運航に賛成した。

 大阪へのインバウンド(訪日外国人客)は増加の一途をたどり、平成30年には過去最多の約1200万人を記録。世界遺産登録により古墳群を目当てにした観光客の大幅な増加も期待される。

 一方、一部に「お墓をのぞき込むのはいかがなものか」との意見があるほか、周辺には住宅地が広がるため、ヘリの離着陸場所の確保や騒音問題など都市部ならではの課題も残る。

 堺市観光企画課の担当者は「全景を見ることで、多くの人に古墳群の雄大さや歴史、価値を感じてもらえる。課題を検証しながらニーズを把握し、世界遺産登録までに民間事業者による事業化を目指したい」と意気込んでいる。

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