新幹線おもてなし加速、苦手な車掌も「英語アナウンス」

 2020年東京五輪・パラリンピックや25年大阪・関西万博を控え、東海道新幹線で車掌が行う英語の車内アナウンスが好評だ。今後さらなる増加が見込まれるインバウンド(訪日外国人客)に対し、きめ細かなサービスを提供する狙い。車掌らは「少しでもネーティブに近い発音を」と勤務時間の合間をぬって英会話を練習しており、中には思わぬアドリブを利かせる人まで登場した。(江森梓)

 「This train is Nozomi228 bound for Tokyo(この電車は、のぞみ228号東京行きです)」

 JR新大阪駅を発車する新幹線のぞみの車内に、流暢な英語のアナウンスが流れる。デンマーク人のアグネス・ソフィー・スナヘルさん(19)は「降りるタイミングがわかってよかった」と笑顔。イギリス人のクリストファー・スミスさん(62)も「完璧な発音だ」と満足した様子だ。

 JR東海は昨年6月、これまで自動放送だった英語のアナウンスを車掌による肉声放送に切り替えた。伝える内容は主にドアの開閉場所や非常時の対応方法など事務的なことだが、車掌によっては晴れの日には富士山が見える時刻などをアナウンスすることも。ネーティブも認める英語力は、車掌らが自発的に勉強会を開くなどした研鑽の結果だ。

 中心となっているのは、大阪第1運輸所の車掌長、仁井田(にいだ)清美さん(30)。きっかけは、平成29年に研修で高山駅(岐阜県高山市)を訪れたことだ。インバウンドでにぎわう同駅では、英語と日本語が併記された手帳を使って駅員と乗客が意思疎通を図る独自の取り組みが行われていた。

 「インバウンドが増えている新幹線でも、何かできることがあるはず」。自身は短大で英語を学び会話に不自由しないが、周囲には英語の苦手な車掌もいる。すぐに職場に「英語力向上委員会」を立ち上げ、車掌らに乗務中に使える英語の例文集を配布したり、休憩時間に聞いたりできる教材を新大阪駅構内にある職場に設置したり、定期的に勉強会を開いたりと、さまざまな取り組みを行っている。

 これまであまり英語を話すことのなかった年配の車掌も、今では「外国人になったみたいだ」と手応えを感じている。仁井田さんは「東京五輪などの開催を控える中、車掌一人一人がカタカナ英語じゃなくてきれいな発音を身につけるようにし、外国人の方の立場に立った案内をしていきたい」と話している。

 ■鉄道各社もインバウンドに対応

 インバウンドの増加が進む中、鉄道各社にとって受け入れ態勢の整備は急務だ。

 国土交通省によると、JR・私鉄のインバウンド向けに割引などがある乗車券の販売数は平成24年度に69万7千枚だったのが29年度は620万7千枚と、約10倍にまで増加。一方で、観光庁のインバウンドを対象にした調査(28年度)で、施設スタッフとのコミュニケーションで特に困った場所として「鉄道駅・ターミナル」と答えたのは12・2%で、2番目に多かった。

 こうした状況の中、東海道新幹線のほかにも、山陽新幹線でも今年3月から車掌による英語の車内放送が始まったほか、JRや大手民鉄31事業者が30年度までに多言語を翻訳できるタブレット端末を導入。さらに、東海道新幹線では今年度中にすべてのトイレを洋式に切り替え、北海道や東北新幹線などでは大きな荷物を運んで移動するインバウンドを念頭に、荷物置き場が設置されている。

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