すでにある事業基盤で夢叶える… 新規事業「パーソナルM&A」

定年後・自走人生のススメ

 「いらっしゃい!」「毎度あり~」-。横浜の某商店街にある“八百屋”の店先から活気あふれる声が聞こえてくる。

 野菜に興味を持って「何か関わる仕事がしたい」と考えていた尾崎さん(仮名、60代)。野菜販売はもちろん事業経営にも無縁だった尾崎さんが、赤字だった八百屋を“買収”して始めた事業が成功し、現在2店舗で“元気な八百屋”を立派に経営している。

 これは、先月開催されたセミナー『パーソナルM&Aで経営者になろう!』で紹介された事例である。セミナーを主催したのは、フィンテックM&Aソリューション(三橋透代表取締役、東京都品川区)。同社は、中小企業が取り組みやすいM&Aの仲介を通じて、中小企業の事業承継問題(後継者不在)の解決に寄与することを目的に2018年3月に設立された。その中小企業のM&Aのサイズをさらに小振りにして“個人版”にしたのが、同社の新規事業である「パーソナルM&A」だ。

 三橋氏の話を伺って、「これは、もしかしたら『自走人生』実践の選択肢になるのでは?」と感じた。定年後研究所では、定年後の会社員が自分のチカラでその後の人生を切り拓いていく「自走人生のススメ」を提唱している。ゼロから「起業」するという選択肢もあるが、すでにある事業基盤を利用して、自走人生の夢をかなえる…というのもアリかなと。

 “元気な八百屋”の成功の秘訣(ひけつ)はいくつかある。まず、店頭の野菜の種類を増やして従来の倍くらいにしたこと、そのために契約農家から直接仕入れる方式を採用した。こうして「新鮮でおいしい野菜の品ぞろえが豊富」を“ウリ”にし、固定客をつないだ。さらに、新規顧客を集めるために、土日に“全国物産展”を開催。各地域特産の野菜を販売するなどして、賑わいを見せているそうだ。最近では、厨房(ちゅうぼう)や調理人を手当てし、新鮮な野菜を使ったサラダなど総菜類の販売も始めた。

 これらのアイデアや実行協力は、すべて仲介会社である同社のサポートによるものだ。同社の「パーソナルM&A」は、売り主と買い主をマッチングして終わりではなく、その後の経営指導などの「パーソナルM&Aサポートサービス」が特徴だ。「土日のイベントには、私も法被を着てお手伝いするんですよ」と三橋氏は楽しそうに語る。

 セミナーに参加していた有線放送会社の事業開業サポート担当者が「飲食業界では事業売却希望が多いんです」と言うと、同じく参加者であったビール会社の人事部門担当者が「わが社には、定年後に飲食業をやりたいというシニア社員が多いんです」と応えていた。「パーソナルM&A」の新しい展開を予感させるような“会話”だと感じた。

 このセミナーは今後も継続して行われるという。9月の予定は、定年後研究所のポータルサイトで公開中だ。

 日本で初めての「50代以上会社員」に特化した、定年後ライフの準備支援機関。定年後の「自走人生」を目指すシニアを応援。ポータルサイト『定年3・0』(https://www.teinengo-lab.or.jp)を通じ、コミュニケーションスタイル診断アプリ「コミスタ」を無料提供中。

 ■得丸英司(とくまる・えいじ) 「一般社団法人定年後研究所」所長。(株)星和ビジネスリンク取締役専務執行役員。1957年生まれ。日本生命保険で25年にわたり、法人・個人分野のFPコンサルティング部門に従事。日本FP協会常務理事、慶應義塾大学大学院講師などを歴任。日本FP協会特別顧問。

アクセスランキング

もっと見る

ピックアップ