1階で火災、上層階のあなたは… 口元を守り、建物の外に逃げることが重要

 京都市のアニメ制作会社「京都アニメーション」で起きた放火事件。1階で放たれた火は、またたく間に3階建ての建物に回り、30人を超える犠牲者を出した。ガソリンが使われたこと、らせん階段があったことなどで被害が広がったとみられるが、日々過ごすオフィスや立ち寄った買い物先でも、1階が火元の火災に巻き込まれるケースはゼロではない。そんなとき、上層階でどんな行動を取ればいいのか。少しでも身を守る手立てを専門家に尋ねた。(大渡美咲)

 「煙が部屋に充満してしまうと、濃度の高い有毒の煙を吸って息苦しくなってしまう。煙が少ない時点で素早く動くことが重要」

 こう話すのは公益財団法人「市民防災研究所」(東京都江東区)の坂口隆夫理事だ。

 本来なら火が回っていない階段から避難するべきだが、すでに階段や1階が火に包まれている場合は、とにかく建物の外に逃げることが重要だという。

 坂口理事は「ベランダや屋上などの屋外にいち早く逃げてほしい。2階などの低層階なら、最後の手段として、飛び降りることもありえる」と話す。飛び降りる際は、突起物がないかなど、地面の様子に注意しなければならない。

一刻も早く逃げる

 今回の事件では犠牲者35人のうち2階以上で31人の遺体が見つかった。死因は焼死のほか、一酸化炭素中毒、窒息などだった。

 「煙に含まれる一酸化炭素を吸わないことと、熱い空気を吸い込んで気道をやけどする『気道熱傷』を防ぐための行動が必要」と話すのは、防災・減災の案内役「防災ナビゲーター」として活動する永山政広さんだ。

 一酸化炭素は空気よりも軽く、煙とともに上の方にたまるため、姿勢を低くすることが重要だという。気道熱傷にならないためには口元をハンカチや手で覆う必要がある。

 ただ、注意点がある。

 永山さんは「ハンカチが必要だからといってハンカチをわざわざ取りに行って逃げ遅れるケースもある。手で覆ったり、手元にあるものを利用したりして、一刻も早く逃げることが重要」と話す。

 坂口理事は低い姿勢の重要性を認めつつ、それを意識するあまり動きづらくなり、逃げ遅れる可能性も指摘する。

動きやすい服装で

 いつ起きるか予測がつかない火災。冷静な判断をするのは難しい。そのために重要なのは日頃の備え。普段から避難経路の確認や、動きやすい服装・靴を心がけることが助かるポイントになる。

 永山さんは「火が付きやすいような材質の服装は避け、熱から肌を守るには袖が長い方がよい。何よりも顔の口周りを熱から守ってほしい」と呼びかける。

 坂口理事は「火災はいつどこでも起きると考えて、会社などの日常生活だけではなく、食事や買い物、映画観賞など、どんな建物でも火事があったらどこに逃げるのか、普段から確認する癖をつける。避難経路を頭に入れて行動してほしい」と注意喚起した。

【用語解説】一酸化炭素中毒

 一酸化炭素(CO)は無色、無臭、無味の気体だが、毒性が強い。人が吸った酸素は血液中のヘモグロビンと結合して体中に運搬されるが、酸素より一酸化炭素の方が結合力が強い。このため、一酸化炭素が先に結合してしまい、酸素が脳や体に運ばれなくなる「低酸素血症」に陥る。軽い中毒症状は頭痛や吐き気など。一酸化炭素と結びついたヘモグロビンが人の血中濃度の30%を超えれば失神、50%で昏睡(こんすい)、70%以上で死に至る危険があるとされる。

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