「横山三国志」の“聖地”危機 10周年の今年、再興なるか

 子供たちを歴史好きに誘う横山光輝氏の名作漫画「三国志」。横山氏ゆかりの神戸市長田区には「三国志の街」を発信するためのギャラリーがあり、今冬で10周年を迎える。JR駅からやや離れた立地や一般への認知度不足から来館者は伸び悩んでいるものの、本家・中国の博物館と交流するなどファンには“聖地”として知られる。12月には10周年イベントの開催も決定し、巻き返しに向けた取り組みが始まっている。(尾崎豪一)

 中国の博物館と交流

 JR新長田駅から10分ほど歩いたマンションの1階に「KOBE鉄人三国志ギャラリー」はある。三国志の関連書籍にフィギュアやカードといった玩具までずらりと並び、やりの名手・趙雲が三国の一つ蜀の皇帝・劉備の息子、阿斗を抱いた銅像などマニアックな展示も。「軍神」と称された名将・関羽が持っていたとされる大刀の重さ体験コーナーもあり、入館無料で三国志の世界を楽しめる。

 新長田駅周辺は、三国志のほか「鉄人28号」「魔法使いサリー」などで知られる横山氏が漫画家になるまでを過ごした場所で、ギャラリーは地元のNPO法人が「鉄人と三国志に出会える街」の発信を目指し平成21年に開館。鉄人28号の等身大モニュメントと並ぶ目玉の一つとされた。

 保有する資料は多く、中国の武候祠(ぶこうし)博物館との交流もある。夏休みには自由研究で訪れる子供の姿も見られ、蜀の丞相・諸葛亮孔明を自由研究する長男(10)と訪れたという兵庫県川西市の男性会社員(52)も「三国志だけでこれほどの資料があるところはなかなかない」と驚く。

 立地、認知度で低迷

 三国志は、3世紀ごろの中国で魏、呉、蜀の三国が覇権を争った興亡史で、映画や漫画、ゲームなどの題材として人気が高い。魏の大軍を呉蜀の連合軍が破った「赤壁の戦い」を題材にした中国映画「レッドクリフ」は大ヒットした。

 長田区でも19年以降、国内最大級の関連イベント「三国志祭」を毎年開催。ギャラリーを中心に周辺の商店街で三国志の武将を描いた旗を掲示したり、関羽や孔明ら名将の石像を設置したりして、活性化の取り組みを進めてきた。

 しかし、ギャラリーは駅からやや遠い立地に加え、一般への認知度不足から入館者は減少傾向。開館翌年には2万人を超えたが、現在は半減している。

 今年7月には県市の合同庁舎完成で庁舎前の三国志にちなんだトリックアートが撤去された。昨年の台風では多くの武将旗が吹き飛ぶなどの被害もあり、街からは三国志色が薄れてしまった。

 インバウンド取り込み

 それでも、全国から熱心なファンが訪れており、中国の無料通信アプリ「微信(ウィーチャット)」で動画が紹介されるなどアジア圏での注目は高い。ギャラリーの岡本伸也館長は「10年たって三国志の名所にはなってきた」と話し、10周年の今年は巻き返し策を打ち出している。

 一口500円から入会でき、営業時間外の入館や茶のサービスなどの特典があるサポーター制度「三顧の礼会」を開設。インバウンド(訪日外国人客)向けには、日英中韓4カ国語対応の音声ガイドを導入した。12月には三国志の講座や衣装体験などを行う「冬の三国志会」の実施も決定。岡本館長は「11月に開く三国志祭とともに地域を盛り上げたい」と意気込む。

 東京国立博物館で開催中の「三国志展」は来館者が10万人を超えるなど、いまだ健在の三国志人気。長田区の取り組みは、著名漫画家の出身地を前面に押し出す鳥取県境港市(「ゲゲゲの鬼太郎」の水木しげる)や同県北栄町(「名探偵コナン」の青山剛昌)に比べると地味だが、インバウンドの取り込みに苦戦する兵庫県の観光の切り札として期待が集まっている。

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