すべてのNHK番組は必要か? 石田総務相は否定的も…スクランブル化する妥当性

 【ニュースの核心】

 先の参院選で「NHKから国民を守る党」(N国党)が比例代表で1議席を得たのをきっかけに、「NHKのスクランブル化問題」が関心を集めている。どう考えたら良いのか。

 まず、私自身の考えを述べよう。私は放送全部でないとしても、スクランブル化に賛成だ。その方が、民間放送との競争が活発になって、NHKにもプラスではないか。

 スクランブル化は放送電波に暗号をかけて、暗号を解読する装置がないと、番組が見られない仕組みである。

 N国党は有料衛星放送のように、NHKについても「受信料を払った人だけが視聴できるようにすればいい」と主張している。逆に言えば、NHKを見たくない人は受信料を払わなくてもいい。

 現状はNHKを見ていなくても、テレビを持っていれば、受信料を払わなくてはならない。それを「おかしい」と思うか、それとも「(公共放送だから)仕方がない」と考えるか、という問題である。

 テレビ放送がスタートした当初はともかく、いまではスクランブル化に技術的障害はない。となると、いまの仕組みを維持するかどうかは、ほとんど政治の問題である。

 石田真敏総務相は「民間放送との二元体制を崩しかねない」「災害報道など公共放送の社会的使命を果たす中で、視聴者が公平に負担する受信料で支える制度になっている」と語り、スクランブル化に否定的だ。

 だが、これでは現状を追認しただけで「なぜ、スクランブル化はダメなのか」という説明になっていない。

 スクランブル化は突然、始まった問題ではないのだから、もう少しマシな話をすればいいのに、現状説明しかできないのは、実はNHK自身が「受信料による公共放送が必要な根本的理由を見つけられないから」と邪推してしまう。自分で自分の存在理由が分かっていないのではないか。

 そこで、あえて考えてみよう。災害報道は利益を度外視して、少しでも早く事実を伝える必要がある。それは公共放送の役割だろう。中立公正な立場に立った政見放送も民主国家には重要だ。

 だが、音楽番組とかドラマはどうか。

 確かに、NHKのドラマには民間放送にない重厚さも感じるときもある。だが、それは予算を潤沢に使えるからだろう。重厚なNHKドラマが見たい人は受信料を払えばいいし、見ない人が払う理由はない。

 報道番組も同じだ。

 私は別に、NHKのニュースをどうしても見る必要があるとは思わないし、実際に大して見ていない。基本的なニュースは、いくらでもネットでチェックできる。

 そうだとすれば、私は災害放送と政見放送くらいは受信料を払ってもいいが、それ以外は払う理由を思いつかない。結局、受信料は大幅に安くして当然ではないか。大部分の番組はスクランブル化していただいて結構だ。

 以上は、視聴者としての意見である。NHKには、しっかり考えていただきたい。現状追認しかできないのであれば、多くの国民はとても納得しないだろう。

 ■長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ) ジャーナリスト。1953年、千葉県生まれ。慶大経済卒、ジョンズホプキンス大学大学院(SAIS)修了。政治や経済、外交・安全保障の問題について、独自情報に基づく解説に定評がある。政府の規制改革会議委員などの公職も務める。著書『日本国の正体 政治家・官僚・メディア-本当の権力者は誰か』(講談社)で山本七平賞受賞。最新刊に『明日の日本を予測する技術』(講談社+α新書)がある。

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