尿管がんでなぜ腎臓を取るのか

【がん電話相談から】

 ■多発・再発しやすく 同時摘出が標準的

 Q 63歳の女性です。今年3月に膀胱(ぼうこう)がんと診断され、経尿道的膀胱腫瘍切除術「TUR-Bt」を受けました。その後、膀胱の奥の方にがんが見えるとのことで、7月に再度、同手術となりました。今度は尿管にがんが見つかり、手術を予定しています。手術が続いて不安です。

 A 最初は膀胱がんの診断。その時は開腹せず、内視鏡によるTUR-Btを受けたのですね。続けて尿管がんも見つかり、心配なのは当然です。この二つのがんは、尿路上皮がんといい、同じ性質のがんです。

 Q 尿管にがんができて、それを摘出するのは理解できますが、今度の手術では開腹して腎臓まで取るということです。その理由がよく分かりません。

 A 膀胱がんが再発したように尿路上皮がんは多発・再発しやすい特徴があります。また、尿管は細く内視鏡でも入りにくいので、正確な腫瘍の範囲の診断が困難です。

 仮に尿管の一部に腫瘍があることがわかって尿管の部分切除を選択して膀胱につなぎなおすことができたとしても、残した尿管や腎盂(じんう)にも再発するリスクが高いことが分かっています。こうしたことから、尿管の手術の際に同側の腎臓、尿管を一緒に摘出する腎尿管全摘が標準的な治療となっています。

 Q 腎臓を残せる可能性はないのでしょうか。

 A 悪性度の低い腫瘍の場合、尿管の部分切除が行われる場合もあります。膀胱に近い部位であれば、残った尿管を膀胱につなぎなおすほか、回腸という小腸の一部を使って尿路を再建する治療法があります。しかし高悪性度や、多発している場合は再発のリスクが高く、再発した場合に手遅れになる可能性が高くなります。このため、腎臓を残すことは、もう一の腎臓の機能が十分な場合は選択されません。

 Q がんのない腎臓まで取るのはとても悔しいです。他の治療方法はないのですか。テレビでガンマナイフという治療方法も見たのですが。

 A ガンマナイフは脳腫瘍に頭部をがっちり固定してピンポイントで放射線を当てる治療です。尿管のようにおなかの中にがんがある場合、いくら体を固定しても尿管が動いてしまいますので、ガンマナイフによる治療は尿管がんには不向きです。

 Q 腎臓を取った場合、もう一つの腎臓で生活できますか。

 A 残された腎臓の働きが十分であるという主治医の判断で、腎尿管全摘を勧められていると思います。腎臓が一つになっても人工透析ということにはなりません。

 Q では食生活に影響が出ますか。

 A 通常は厳しい食事制限は必要ありません、腎臓に負担をかけないように塩分控えめの食事を心がけてください。

                   ◇

 回答には、がん研有明病院の米瀬淳二・泌尿器科部長が当たりました。カウンセラーによる「がん電話相談」(協力・がん研究会、アフラック、産経新聞社)は、03・5531・0110。月~木曜日(祝日は除く)午前11時~午後3時。相談内容が本欄やデジタル版に匿名で掲載されることがあります。

                   ◇

 ≪ミニ解説≫

 ■膀胱がんの原因に喫煙も

 尿路上皮がんは尿の通過路である尿路(体の上から腎盂、尿管、膀胱、尿道)にできる。この中で頻度が高いのは膀胱がんで、今回の相談者も最初に発見されたがんは膀胱だった。膀胱がんになると、上部尿路(腎盂、尿管)にもがんができることが少なくない。その反対のケースもある。膀胱がんの原因はさまざまあるが、喫煙もその一つに挙げられている。そのメカニズムについて「たばこの煙の中の発がん物質が尿中に排泄(はいせつ)され、その尿に長期間触れていた膀胱や尿管の上皮(粘膜)が、がん化すると考えられています。ですから尿の通り道全体ががんになりやすいのです」と米瀬医師は説明する。

アクセスランキング

もっと見る

ピックアップ