児童養護施設から大学へ 支援に課題

 さまざまな事情により、児童養護施設や里親家庭で育つ子供たち。経済的な理由などで、大学や専門学校への進学率は30・8%(昨年度)と、全体(73・8%)に比べ大幅に低い。こうした子供たちを支援しようと、国による学費免除などの制度が来春、本格的に導入されるほか、大手予備校や大学も支援に乗り出し始めた。一方、幼少期からのきめ細かい指導や自立後の支援も、課題として浮かび上がっている。(加納裕子)

 「浪人という選択肢はほとんどない。受験費用などを稼ぐため、直前までアルバイトもやめられません」。大手予備校「河合塾」新宿校の進学アドバイザー、金沢恵美さんは、児童養護施設から大学を目指す高校生たちの状況をこう説明する。

 同塾では今年度、大阪市と名古屋市で児童養護施設に入所する高校生を対象に、模試の無料受験や無料進路相談の提供を始めた。東京都では平成22年から行い、昨年度までに約50人をサポートしてきた。

 金沢さんは「相談してもらうことで、選択肢が広がる」と話す。結果的に専門学校に進学した例もあるが、効率的な勉強法なども含め、さまざまな情報を提供。推薦入試での志望理由書の添削や面接の練習にも対応している。

 大学独自の授業料免除も広がる。近畿では、奈良佐保短期大学(奈良市)が児童養護施設と里親家庭の子供たちを対象に授業料を半額にする奨学制度を実施しており、現在は5人が制度を利用。担当者は「高等教育を受けるチャンスを提供したい」と話す。

 来春からは国による授業料免除や奨学金の制度が拡充される。関係者は進学率アップを期待している。

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 経済面や学力向上への支援が広がる一方、別の課題もある。大阪府社会福祉協議会児童施設部会の伊山喜二部会長(68)は、「無気力や勉強の習慣がないなどの問題があり、大学進学まで持っていくのが難しいこともある」と打ち明ける。

 厚生労働省の調査では、児童養護施設で暮らす子供たちの約6割は、虐待を受けた経験がある。伊山部会長によると、大人への不信感や心の傷があるために集団生活になじめない場合もあり、「学校へ行く、テーブルにつくなどといったことからきめ細かいフォローが必要だが、職員が足りないのが現実だ」と訴える。

 大学進学後も困難はある。児童養護施設で養護を受けられるのは原則18歳未満まで。4年制大学への進学者が増えたことを受けて平成28年、22歳の年度末までは別の施設で暮らせる制度も創設された。

 だが、施設から大学が遠いなどの場合は、進学を機に自立する子も。しかし、学費や生活費を稼ぐアルバイトと学業の両立に疲弊し、大学生活が破綻してしまうケースもあるという。

 全国児童養護施設協議会が全国の施設を対象に昨年行った調査では、進学支援の課題について、約65%の施設が「進学後のフォロー体制」を挙げた。大橋和弘調査研究部長(68)は「自立した後も施設が継続して関わり、実家のように食品を送ったり、長期休みや病気のときに帰ってきたりできるような制度があれば、精神的にも支えることができる」と話している。

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 児童養護施設 虐待や親の病気、経済的事情などで実の家庭が育てられなくなった子供を養育する施設。厚生労働省によると、昨年3月末時点で施設数は605カ所、入所する子供の数は約2万5千人。養護を受けられるのは原則18歳未満までだが、必要な場合は20歳に達するまで措置延長が可能。就学中の場合は22歳の年度末まで「自立援助ホーム」で生活できる。

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