日本のムスリム墓地不足顕在化 土葬や異文化への不安視も

 日本に約20万~30万人が住んでいるとされ、外国人労働者受け入れ拡大などで今後増えることが予想されるイスラム教徒(ムスリム)の墓地不足が顕在化している。ムスリムは信仰上の理由で土葬なのだが、土葬ができる墓地がほとんどない上に、中東情勢の影響や習慣の違いへの不安も根強く、地域住民からムスリム墓地開発の理解が得づらいためだという。かつて持ち上がった栃木県足利市のムスリム墓地の建設計画からみえるムスリムの悩みとは…。(根本和哉)

住民の反発で頓挫

 足利市にムスリムの墓地を建設する計画が動いたのは平成20~22年。日本イスラーム文化センター(東京都豊島区)が、同市板倉町の山中に土地を確保し、約500体を土葬できる墓地を造ろうとした。

 日本に土葬を禁じる法律はなく、埋葬の仕方は自治体の判断。例えば、東京都は一部地域を除いて条例で土葬を禁止している。足利市には土葬を禁じる条例はなく、墓地開発は可能だった。

 センターは市や住民らに説明を繰り返したものの、住民は大反発。計663人分の反対署名を集め市へ提出するなどし、市は「建設は住民の理解を得てから」とセンターに通達。計画は頓挫した。

 市は「板倉町は中山間地域で、昔から住み続けている人が多い場所。そんな土地で、なじみがない土葬に対して不安だという声が多かったのもうなずける」と話す。

土葬への忌避感

 かつては日本も土葬が一般的だったが、今は状況が一変。厚生労働省の平成29年度の統計では、約99・97%が火葬となっており、住民が土葬を問題視したことに理解はできる。

 また、墓地建設予定地の近くに住む60代の女性は、当時のことをこう振り返る。

 「中東でテロなども起きていて、イスラム教に怖いイメージがあった。土葬が習慣だということは分かるが、こんな静かなところに墓地を造られて、後で拡大されても嫌だと思った」

 その後、墓地の建設計画が再燃することはなく、反対運動も過去の話として薄れつつある。建設が予定されていた山の麓に掲げられていた多数の建設反対をうたう看板は、今はほとんど撤去されていた。

安らかに眠らせたい

 土葬が禁止されていない自治体でも、土葬は火葬よりも場所をとるため、墓地側が禁じているケースもある。そのため、ムスリムが亡くなると、専用の墓地に埋葬されている。

 日本イスラーム文化センターによると、現在国内にあるムスリム向けの墓地は7カ所。区画にはまだ余裕があるというが、中国地方以西には存在しないなど、地域に偏りがある。

 また、数が少ないために遺体を離れた場所にある墓地へ運ばなければならないことが多く、遺体が傷むリスクや高額な運搬費などが常につきまとう。

 「本当は全国各地に墓地を造り、亡くなった人を安らかに眠らせてあげたい。しかし、土葬や異文化への不安があるのか、地域住民の同意がなかなか得られない」とセンターは訴える。

 日本におけるムスリムの人口は増加傾向にあり、今後墓地不足がより深刻化する可能性がある。何よりも墓地不足の背景には、異文化共生の難しさが表れている。

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