熊にほえる“ベアドッグ”の「エルフ」と「レラ」 独り立ち目指し訓練中 

 街の平穏な暮らしを守るため、人間の居住エリアに出没する熊をほえ立てて森に戻す-。そんな役割を担った3代目の「ベアドッグ」(熊対策犬)が、来夏の独り立ちを目指し、軽井沢町で訓練に励んでいる。厳しい適性試験をクリアした1歳の「エルフ」と「レラ」の姉妹犬で、優秀な母親犬「タマ」の資質を受け継ぎ、ハンドラー(飼育士兼訓練士)と日夜を共にする中で、ベアドッグとしての才能が開花しつつある。為(な)せば成る。羽ばたけ、「2匹の娘たち」。(松本浩史)

 ■指示を遂行

 軽バンの助手席でエルフが控え、荷室にはレラが座っている。訓練場から少し離れた犬舎を出るときに、ハンドラーの田中純平さんにハーネスを付けられ、「これから訓練なのだ」とすでに理解している。「戦闘モード」の境地に入っているのだ。

 軽バンから降りると、田中さんが「アー・ユー・レディー」と声を掛けた。すぐさま「ファインド・ザ・ベア」と指示を飛ばす。一目散に林道を走り出した2匹は、丁字路に差し掛かったら足がピタッと止まり、一点に目をこらした。

 視線の先には、訓練用の熊の剥製がある。「バーク」(ほえろ)。再び田中さんの指示が出た。その刹那、猛烈な勢いでほえ立て始める。ほえ止む気配がまるでない。「リーブ・イット」(構うな)。その指示でようやく辺りに静寂が戻った。田中さんの指示を完璧に遂行したのである。「グッド・ジョブ・オン・ザ・ベア」。そう褒められた2匹は、実に満足げな表情を浮かべている。

 やぶに隠れて訓練を手伝っていたケンネルスタッフ(ベアドッグ育成サポート)の武内有希さんも姿を現し、2匹の頭をなでる。振りまくっている尻尾を見れば、その心境がうかがい知れる。

 ■「まだ信用できない」

 「つくられた状況で2匹をだますんです。訓練前の段取りが何より大切になる」

 田中さんはそう言う。剥製には、熊の臭いが付けられており、載せた台座の下部には車輪が設えられ、5メートルほどのロープも付けられている。やぶにいた武内さんがロープを引っ張ったり、緩めたりして、あたかも本物の熊が動いているように、2匹を「だます」わけだ。

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