「紙の本なくならない」ページめくる動作にカギ

 電子書籍の普及などに伴って紙の書籍の市場は縮小を続けている。平成30年の紙の書籍の市場規模が前年比で5・7%減ったのに対し、電子書籍市場は11・9%増加。今後も電子書籍の市場拡大が見込まれる中、「紙の本はなくならない」と明言するのが、龍谷大社会学部の松島恵介教授(51)だ。生態心理学の観点から記憶について研究している松島教授は「記憶の仕組みを考えた場合、紙の本には電子書籍にない優位性がある」と強調する。(花輪理徳)

 「紙の本を手に取って読むとき、書かれている内容を記憶するのと同時に、ページのどの位置に、どんな内容が書かれていたか、ページの肌触りや紙の質といった無数の情報を無意識に五感で受け取っている」。松島教授はこう指摘する。

 過去に海外で行われた実験では、同じ本を2つのグループにそれぞれ、紙の本と電子書籍で読ませて記憶力を試すテストを行ったところ、内容に関する記憶では差が出なかったものの、ストーリーの順序に関しては、紙の本で読んだグループの方が成績が良かった。

 松島教授はその要因について「ページをめくるという動作にカギがある」と説明する。紙の本を手に取って読み進めるうちに開いた本の左右の厚さが変わっていくことで、読者は無自覚的に、今読んでいる部分が序盤なのか、終盤なのか感じ取っているのだという。

 松島教授は「電子書籍でも画面をなぞることで擬似的にページをめくることや、読んでいるページ数と総ページ数を同時に表示できるが、紙の本の『厚さ』といった直観的、身体的知覚には及ばない」と話す。

 紙の書籍と同様、インターネットの台頭などで部数の減少が続く紙の新聞についても「広い紙面に複数のニュースを価値に応じて配置したり、大きなニュースは目立つように白抜きの見出しを使ったりなど、見せ方に工夫を凝らしている」と指摘。「直観的に理解できることが記憶形成には重要。紙の新聞の読者は表記法と記事の内容を無自覚に関連させ、強固に記憶することができる」と紙の新聞ならではの強みを挙げる。

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