神秘の茶碗「曜変天目」 岡山の陶芸家が再現に挑戦

 南宋時代の中国で制作され、「器の中に宇宙が見える」とも評される「曜変天目茶碗」。現存する完品は3点のみ、謎に包まれた茶碗の再現に取り組む陶芸家は後を絶たず、岡山県津山市の作陶家、鈴木禎三さん(45)もそんな一人だ。昨夏、独特の玉虫色に輝く斑点を作り出し、オリジナルに近づくことに成功した。来年にはお披露目を兼ねた個展を予定している。

 曜変天目茶碗は12~13世紀、南宋時代に中国・福建省の建窯で焼かれたといわれている。現在、完全な形で残されているのは、藤田美術館(大阪市)などが所蔵する国宝指定の3点。なぜ途絶えたか、なぜ日本にしか伝わらなかったかなど、謎に包まれたままだ。平成28年にはテレビの鑑定番組で、出品された茶碗が国宝級の「曜変天目」と鑑定されたが、直後から疑問視する専門家らの声が相次ぎ、騒動となった。

 母方の祖父が、愛知県瀬戸市の陶工、鈴木青々という鈴木さんは、幼稚園のころから図録を見るなどして、曜変天目の美しさに魅せられていた。祖父の死を機に陶芸家の道へ進み、平成14年に28歳で津山に工房を築いた。同時に憧れだった曜変天目の研究を始めた。

 鉄の釉薬(ゆうやく)をかけて窯のなかで焼くだけで、絵付けでも出すことのできない美しい模様をどうやってつくり出せばいいのか。「何度も焼いては割って、をくりかえしました」。昨年7月、ようやく夢のような1碗があがった。碗には、細かな斑点が黒い器肌のなかでまるで流れ星のように散り、瑠璃色の輝きを見せる。ただし、釉薬や土や窯の種類など制作過程については「どなたにも話さず墓場まで持っていくつもりです」と鈴木さん。「技の完全な再現は無理だと思います。国宝3碗に近づけるものを作れるかが勝負」と語る。

 今年も数碗、焼くことができた。来年には各地で個展を予定しており、5月には大阪府守口市でも開く。(正木利和)

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