大阪-金沢の直通特急がなくなる?!北陸新幹線延伸の思わぬ余波

 北陸への旅行の場合、関西在住なら特急「サンダーバード」、中京圏ならば特急「しらさぎ」に乗車する人も多いだろう。この特急が、令和5(2023)年春に北陸新幹線が金沢市から福井県敦賀市まで延伸すると、敦賀駅止まりになり、金沢駅までの直通でなくなる見通しだという。利用者からは「不便になる」と不満も漏れるが、なぜ直通しなくなるのだろうか。

 ■新幹線の開業効果

 JR西日本によると、正式決定ではないが、北陸新幹線が敦賀まで延伸するのに伴い、特急は敦賀駅が終点になる見込み。大阪・名古屋から福井・金沢に行くには乗り換えが必要になるという。

 そうした変更の背景には、新幹線と特急が同じ区間を走行することのデメリットがあるようだ。

 国交省幹線鉄道課は「新幹線と同じ区間を特急が走ることを規制していない」としており、制度的には“共存”は可能。しかし実際は、「新幹線の開業効果を最大限発揮するには特急の継続は難しい」(同課)。特急と新幹線で利用客を奪い合い、互いに経営の足を引っ張るならば元も子もないからだ。

 新幹線側だけでなく、在来線の側にも影響が出る可能性があるという。

 ■地元三セクの経営に影響

 新幹線の開業に伴い、並行するJR路線(並行在来線)はJRから経営分離され、沿線自治体でつくる第三セクターに譲渡される。

 これは新幹線の営業主体になるJRの負担を軽減するための方策で、平成27年3月に開業した北陸新幹線の長野-金沢間では長野、新潟、富山、石川各県でJR西日本から並行在来線を引き継ぐ三セクが設立された。

 福井県の試算では、三セクの開業初年となる令和5年度の収入は32億9千万円。そのうち17億8千万円をJR貨物から支払われる「貨物線路使用料」が占めるが、特急を現状維持させると、これが7億円も少なくなる。

 貨物線路使用料は、走行する旅客と貨物の車両編成や運行本数で負担割合を決めるため、編成も本数も多い特急が走ると、おのずとJR貨物の負担額を押し下げることになる。

 ただでさえ開業初年度は8億2千万円の赤字予測と苦しい経営が懸念されており、特急を継続すると大きな痛手になりかねない。

 北陸新幹線では、レール幅を変えられるフリーゲージトレイン(FGT、軌間可変電車)の導入が検討されていた。新幹線車両が特急路線に乗り入れ、乗り換えを回避する方法とされたが、FGT開発が難航したことで昨年、導入を正式に断念。こうした経緯から、乗り換えに対し沿線住民の不満は高まっている。

 ■乗り換えを楽しむ

 しかし、悲観的な話だけではない。直通しなくなる関西、中京圏から北陸に向けた観光需要を喚起する可能性があるというのだ。

 実はサンダーバードとしらさぎは過去すでに、同じような経験している。元々の終点は富山駅だったのが、平成27年3月の北陸新幹線開通時、金沢駅に切り替わった。

 このときのことについて、旅行代理店のJTB広報室は「27年は関西から富山方面のツアー企画が前年比で大きく伸びた」と話す。阪急交通社でも、関西から北陸・甲信越方面に回る周遊ツアーの参加者数が、新幹線開業前の26年度と比べ、30年度は約3割増になったという。

 これは、乗換駅周辺が周遊スポットに加わったりしてツアーの新しい魅力になったためだ。実際、福井県を訪れた観光客に話を聞くと、「慣れない列車で乗り換えが増えるのは不安」「急いでいるときは困りそう」などとする声がある一方、「仕事だとめんどうだが旅行なら楽しめそう」と歓迎する向きもあった。

 一見不便とも感じられる乗り換えを楽しめるような誘客策を効果的に展開することが、不可欠だ。

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