初の女流棋聖奪取した36歳・鈴木七段 若手独占崩す

 囲碁の第23期女流棋聖戦三番勝負第3局で10日、挑戦者の鈴木歩(あゆみ)七段(36)が上野愛咲美(あさみ)女流棋聖(18)に勝ち、初の女流棋聖を奪取した。今年初めて決着がついた囲碁のタイトル戦は“大番狂わせ”となった。昨秋、全員に参加資格がある竜星戦で女性で初めて決勝に進出したほか、44勝(25敗)をあげ年間勝利ランキング3位の若手第一人者をプロ19年目の中堅が破ったのだ。

 「上野さんは強いので開幕前も、勝った第1局のあともタイトルを取れるとは思っていなかった。無欲で戦ったのが、よかったのかもしれない」

 鈴木七段は16人による本戦トーナメントで藤沢里菜女流名人(21)や万波奈穂四段(34)ら強豪を破って、上野女流棋聖への挑戦権を獲得。三番勝負でも積極策に出た第1局で相手のミスを誘い白番3目半勝ち。第2局は上野女流棋聖が勝利したが、この日の第3局も序盤に優位に立つと、難解な中・終盤も冷静に対応し勝利をつかんだ。

 岩田一九段門下の鈴木七段は、平成13年に17歳で入段、トーナメント戦の女流最強戦で15年と19年に優勝の実績がある。20年の女流本因坊戦五番勝負、27年の女流名人戦三番勝負では挑戦権を獲得したが、いずれも謝依旻(しぇ・いみん)六段(30)の前に屈した。23年の棋聖戦では、あと1勝でリーグ入り(当時12人)まで迫った実力の持ち主だ。

 「“あと一歩でタイトルだったのに”とは何度も言われた。強くなったわけではなく、プロとして年数を重ねたこと、生活環境が変わったことで無心に打てるようになったのかも」と新女流棋聖は謙遜して話す。

 25年にプロ入りが1年先輩の林漢傑(りん・かんけつ)八段(35)と結婚し、5歳と2歳の娘がいる。「漢傑さんは家のことを本当によくやってくれる」と感謝するが、囲碁の研究に費やす時間は多くて1日4時間程度で、以前の半分程度という。それでも林八段とAI(人工知能)ソフトを利用した研究で、集中的に学んだのが、この日の結果につながったようだ。

 20年以降、女流囲碁界を牽引してきた謝六段に代わって、ここ数年は藤沢女流名人と上野女流本因坊がタイトル戦線の常連だ。昨秋の女流本因坊戦では、藤沢が持つタイトルを上野が奪取。5つある女流タイトルのうち、藤沢が女流名人・女流立葵杯・扇興杯の3つを、上野が女流本因坊と女流棋聖を持つ2強時代になっていた。

 そこへ30代の鈴木新女流棋聖が割って入った。

 「タイトルを取ったこともあり、恥ずかしくない碁を打つように精進していきたい」

 女流囲碁界に新しい風を吹かせる。(伊藤洋一)

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