オーストリア伯爵が爆買いしたもの 「江戸ものづくり列伝」展

 青い目をした裃(かみしも)姿の男はブルボン家の血を引くオーストリア貴族、バルディ伯爵ことエンリコ・カルロ・ディ・ボルボーネ(1851~1906年)。伯爵は1887年9月から2年3カ月にわたって世界一周旅行を敢行し、日本にも約8カ月間滞在した。

 1889(明治22)年2月に長崎到着後、伯爵一行は九州から北海道まで各地で歓待を受け、東京では鹿鳴館に宿泊し明治天皇にも謁見している。何がすごいかといえば、滞在中に日本の美術工芸品を1万点以上も“爆買い”し、欧州に持ち帰っているのだ。

 バルディコレクションは紆余曲折(うよきょくせつ)を経てイタリア政府の所有となり、ベニス東洋美術館に収蔵されている。このほどその一部が初来日し、江戸東京博物館(東京都墨田区)で開催中の「江戸ものづくり列伝」展で、漆器や能装束、刀と刀装具などえりすぐりの35件を見ることができる。

 「明治政府の輸出振興政策で、当時は西洋人好みのゴテゴテした装飾の工芸品が多数作られましたが、伯爵はそれらには目もくれず、江戸期に大名家で使われた蒔絵(まきえ)の調度品や刀剣などを好んで集めた。サムライ文化にあこがれがあったのでしょう」(担当学芸員)。いずれも伯爵が日本文化を肌で感じ、知見を広げる中で選んだ文物だ。

 バルディコレクションだけでなく、この企画展の主目的は江戸東京で花開いた工芸の紹介。江戸末期から近代にかけて活躍した5人の名工-蒔絵師・原羊遊斎(ようゆうさい)と柴田是真(ぜしん)、陶工・三浦乾也、金工・府川一則、ミニチュア工芸・小林礫斎-を中心に、職人の技と飽くなきチャレンジ精神に迫る。

 4月5日まで(展示替えあり)。月曜休(2月24日は開館し25日休)。問い合わせは03・3626・9974。(黒沢綾子)

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