昔懐かしい「固めプリン」 流行のきっかけは「エモい」?

 プリンといって思い浮かべるのは、どんな姿をしているだろうか。長らく市場には「生」をうたったムース状のプリンが並び、瓶詰めされスプーンですくって食べるものが人気だった。そんな中、数年前から口コミで広がりつつあるのが「固めプリン」。いわゆる、昔懐かしい風情の残る台形型プリンだ。(飯嶋彩希)

2時間で売り切れ

 東京都新宿区の「オールシーズンズコーヒー」は、全国各地から集めたコーヒー豆を自家焙煎(ばいせん)するコーヒーショップ。新型コロナウイルスの流行前は、午後になると平日でも20~30代女性を中心に長蛇の列ができた。目当ては、午後1時から提供される「クラシックプリン」。毎日手作りのため1日に作れる上限があり、2時間で売り切れてしまう日もあった。

 平成30年のリニューアルオープンに伴い、コーヒーに合う焼き菓子を模索したところ、菓子作りが趣味という20代男性スタッフが「プリンなら得意」と提案したことからメニューに採用された。

 男性のオリジナルレシピを基に作ったが、滑らかな舌触りを残すため、何度も温度や焼き時間を変えて試行錯誤した。オーブンの火加減が難しく、同じように作っても思うようにいかないこともあった。スタッフや客の意見を参考に改良を重ねること数カ月、ようやく今の形が完成した。

 店長の竹内万智子さん(37)は「コーヒーがメインの店で、窯はあったけど誰も触ったことがなかった。スタッフのレシピを基に作ったので、あえて固めプリンを作ろうとしたわけでもなく、プリンがはやっていることも知らなかった」と振り返るが、プリン目当ての行列は採用後すぐに訪れたという。

 大振りのプリンの上に、クリームとさくらんぼが乗った見た目は、写真を撮らずにはいられないかわいらしさだ。

 特徴は皿からあふれそうなほどたっぷりかかったカラメルソース。きび砂糖を使いアマレットで香りづけしたカラメルソースは、苦味とほのかな酸味が広がる独特な風味となっている。コーヒーに合うよう甘さは控えめだ。

 新型コロナによる政府の緊急事態宣言後は開店と同時に提供し、テークアウトもできるようになった。

20~30代女性の心つかむ

 「固めプリンに注目が集まり出したのは平成29年ごろ」。こう話すのは、グルメライターの矢崎智也さん(29)。矢崎さんは「固めプリン」と題して喫茶店などのプリンをツイッターで取り上げてきた。人気となった背景は2つあると分析している。

 固めプリンがはやるまでは、「SNS映え」する華やかなグルメが人気だったが、29年ごろから「エモい」という言葉が若者の間で台頭した。

 エモいとは、切ない、趣がある、ノスタルジックなど感情が揺さぶられる意味の流行語で、喫茶店で出される固めプリンは、ちょうど当てはまる食べ物だった。流行したパンケーキやかき氷に比べて、落ち着きながらもかわいらしい見た目は、20~30代女性の心をつかんだ。

 また、プリンのイメージは皿の上に立つプリンだったのに対し、コンビニエンスストアで提供されるプリンの多くはムース系ばかり。プリン以外にも「生」といううたい文句のついた食べ物がはやったため、「固めプリンの需要を発散する場所がなく、今になってこのような感じではやり始めたのでは」と話す。

 矢崎さんのSNSに寄せられる反響で多かったのは、「滑らかすぎるものではなく、普通のプリンを求めていた」という声。需要に供給が追い付き、昨年のタピオカブームのような爆発的な広まりにはならず、定番商品として人気を集めそうだ。

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