藤井新棋聖、誕生!“現役最強”渡辺棋聖と伝説の名勝負、110手押し切る

 後手の藤井聡太七段(17)が、渡辺明棋聖(36)=棋王・王将=に110手で勝ち、シリーズ3勝1敗として初タイトルとなる棋聖位を獲得した。17歳11カ月でのタイトル獲得は1990年に18歳6カ月で棋聖を獲得した屋敷伸之九段(48)の最年少記録を30年ぶりに更新した。現役高校生で初のタイトルホルダーとなった新棋聖は、王位戦七番勝負でも2連勝中。竜王戦と合わせて、年内に三冠を制する可能性もある。

 光の速さで、歴史の扉をこじ開けた。19日に18歳になる高校3年生は、17歳最後のタイトル戦を制し、最年少記録を更新した。藤井新棋聖は白の着物に黒い薄手の羽織姿で、うつむきがちに勝利の余韻に浸った。

 「最後までどうなるかわからなかった。際どいと思っていたので、局面以外のことは意識していなかった。渡辺先生と五番勝負で対局して非常に勉強になった」

 思い出の関西将棋会館で、初戴冠。小学4年で奨励会に入り、月に2度、愛知・瀬戸市から母・裕子さんと約2時間半かけて通った。「昔から来ていた場所。落ち着いて臨めた」。昼食もとらず年上との対局に没頭した、あの日から8年。最初の頂に立った。

 大逆転で木村一基王位(47)に連勝を収めた、札幌での王位戦第2局から中1日。過密日程による心身の疲労を不安視される中、「魔王」の異名を取る渡辺棋聖に立ち向かった。第1、2局に続き3度目となる矢倉でのぶつかり合い。先手の渡辺棋聖は、藤井七段の「神の手」に屈した第2局と同じ展開に誘い込んできた。

 後手の藤井七段は堂々と応じた。「現役最強」の三冠保持者に追い込まれたが、80手目に飛車交換を辞さない△3八銀で流れを変えた。相手の飛車がたまらず逃げて生まれた勝機を逃さず、グイグイ追い詰める。攻め手を失い110手で「負けました」と頭を下げた渡辺棋聖に「すごい人が出てきた」と言わしめた。

 「藤井はAIより強い」-。加藤一二三・九段(80)をはじめとする大先輩たちは、こう評する。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、4月から50日以上、対局ができなかった。それでも「自分の将棋を見つめ直すことができた」と自宅で研究を重ねた。その成果が、第2局の神の手、この日の△3八銀へと結実した。

 「今はあまり実感がないのが率直なところ。これからタイトルホルダーとしてしっかりした将棋をお見せしなければ。いっそう精進して、いい勝負ができるように」

 現在の八大タイトル保持者は豊島将之(30)=名人、竜王、永瀬拓矢(27)=叡王、王座、渡辺明(棋王、王将)、木村一基(王位)と藤井新棋聖の5人。新棋聖は18歳で迎える8月4、5日に、連勝中の王位戦七番勝負第3局に臨む。8月中にも10代初のダブルタイトル、さらに竜王戦でも決勝トーナメントに進んでいるため、年内に三冠獲得の可能性もある。

 将棋界には、1996年に当時の全七冠を独占した、通算タイトル99期の羽生善治九段(49)という大きな山もそびえ立つ。藤井少年は、小学4年でラジオに出演した際に「名人を超えたい」と目を輝かせて言い切った。10歳で選んだ夢への道を、ただまっしぐらに駆ける。

アクセスランキング

もっと見る

ピックアップ