「どんな人も全力で守る」自衛隊の使命感 九州豪雨から2週間余…1500キロ超!北海道から駆け付けた部隊も 防衛問題研究家・桜林美佐氏が寄稿

 九州に甚大な被害をもたらした豪雨災害から2週間以上が過ぎた。人命救助や土砂の撤去、被災者支援のために「災害派遣」された自衛隊の中には、何と1500キロ以上離れた北海道から駆け付けた部隊もあった。「どんな人も全力で守る」という自衛官の思いとは。防衛問題研究家の桜林美佐氏が寄稿した。

 

 夜中、けたたましいエリアメールの音で飛び起きた。数百人の隊員が、つかの間の眠りについていた体育館では、その後も着信音が鳴り響き、そのまま夜明けを迎えた。

 北海道の陸上自衛隊第12施設群(岩見沢市)を中心とした北方施設支援隊の主力部隊が、南恵庭駐屯地(恵庭市)を出発したのは7月8日。小樽港からフェリーに乗船して九州へ前進した。

 先行班は新潟港(新潟市)で、主力部隊は舞鶴港(京都府舞鶴市)で下船し、その後は陸路をひた走った。日本海側のいくつかの駐屯地で給油し、7月11日の深夜に福岡県の小郡駐屯地(小郡市)に到着。ここを一時的な拠点として熊本の被災地に赴いた。

 「ここじゃあ、眠られんやろ」

 北の国から来てくれる部隊にとって暑い九州の夜は辛かろうと、受け入れる駐屯地では熱中症防止のため扇風機をあちこちに設置し、新型コロナウイルス対策でバレーボールネットを張りつめた。昼夜走り続けた隊員たちに、「少しでも休息をとってほしい」との思いで準備を整えたが、周辺地区の避難を促すメール音で結局、疲れを取ってもらう間もなかった。

 とはいえ、当の北方施設支援隊は「ストーブを持ってきてしまいました」というので、九州の隊員を驚かせたという。北海道では夏の演習でも必須だそうだ。

 北方部隊はその後、宮崎県のえびの駐屯地(えびの市)を拠点とし、熊本県内で堆積土や流木の除去などの活動を開始した。

 しかし、これだけ自衛隊が活動している傍らで、「災害ゴミが片付いていない」という話も報じられている。なぜか。

 その理由は、熊本県人吉市においては、機械力を駆使する作業より、むしろ「ゴミの分別」を重視しているためだ。これは、熊本地震や各地の同様の災害で分別しなかったことでゴミの処理が進まずに、かえって復興を遅らせてしまったことから取られた方策であった。

 この、「少しずつ分別撤去する」という全国初の取り組み「人吉モデル」は長期的に見れば復興を早めるという。

 高齢者が多いことや、コロナの影響でボランティア力の来援がかなわないため、自衛隊が頼りにされている。毎年のように起きる災害、そして高齢化社会において国防のための訓練といかに両立させるかは、ますます大きな課題だ。

 「自衛隊は要らない」という人、あるいは「災害派遣はすべきでない」と考える人などさまざまだが、自衛隊はどんな人も全力で守る、それだけは確かだ。

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